10月3日、第一東京弁護士会所属の弁護士であり、駿河台大学法科大学院教授も務めている寳金敏明氏(※ほうきん)を講師に招き、「境界問題の実務」の研修が行われた。 |
寳金氏は、長年、訟務検事として境界問題に携わり、各種著作も豊富な実力派講師である。 |
境界問題を解決する際に「公法上の境界」と「私法上の境界」との区別が必須であるという点までは理解している会員も多いかと思われるが、今回の研修では「境界」の概念がさらに深く掘り下げられ、「公物管理界」等といった類似の概念についても詳細な解説がなされた。 |
また、境界調査についても、主催者やその法律効果から様々な種類が存在し、法務局の担当者でも完全に理解していない場合もあることが説明された。 |
随所に具体的事例を交えつつ、また各制度の歴史的背景にまで言及しながら進められる講義は、豊富な実務経験に裏付けられた説得力に富むものであった。 |
特に各種標識が工事関係者等によって移動されることが多いという実態を踏まえ、「石はあるべき所にあってはじめて境界を示す」と述べて各種標識を軽信することのないように、との忠告には大きな衝撃を受けた。 |
研修の最後には、東日本大震災による地殻変動が今後の実務に及ぼす影響等についても触れられた。今回の地殻変動では、最大5.3mの基準点の移動が確認されている地点もあるとのことで、この地殻変動に対し、従来の境界判定の実務では十分な対応ができない可能性があるという指摘もなされていた。 |
境界問題が古くて新しい、我々会員がさらなる研鑽をする必要性のある問題であることを改めて認識させられた。 |
(会員 早川 和孝) |