横浜弁護士会新聞

2011年10月号  −3− 目次

地域司法計画 in 札幌 札幌弁護士会との協議会開催
 8月21日、当会の地域司法計画委員会の委員が札幌を訪問し、札幌弁護士会の地域司法対策委員会と協議会を行った。当会からは、安藤肇副会長を始め13名、札幌弁護士会からは19名が参加した。地域司法計画運動を担う他会の委員会との意見交換を目的とするもので、今回が初めての企画である。
 札幌弁護士会の地域司法対策委員会は、弁護士へのアクセス改善や裁判所の支部問題、公設事務所の開設準備等を職務としており、協議会の参加者も公設事務所に所属する委員を含め50期代後半から60期代の委員が多かった。
 最初に、それぞれの管内の司法の状況や、これまでの委員会の取り組みについて報告をした。
 当会からは、毎年、市町村議会議員との懇談会を重ね、昨年は「神奈川の司法10の提案2010」を作成し、県西支部で首都圏弁護士会支部サミットを開催したことや、今年度の関弁連大会で管内の司法基盤の整備を求める決議を検討していること等を報告した。
 これに対し、札幌弁護士会からは、すずらん基金法律事務所(全道の弁護士が特別会費を負担して「すずらん基金」を創設し、道内の弁護士過疎地に派遣する弁護士を要請するために開設された公設事務所)の活動や、同基金を利用して昨年実施した全道一斉無料法律相談、夕張市等の旧産炭地での無料法律相談の企画等について報告があった。いずれも、自治体との緊密な協力関係の下で活動していることが印象的であった。
 その後、地域司法の充実に向けた具体的な運動のあり方について意見交換した。
 裁判官が常駐していない支部は全国で46か所あるが、そのうち10か所が道内にある。北海道弁護士会連合会では、昨年、「裁判官・検察官非常駐支部解消に向けた行動をとることの宣言」を採択しており、非常駐支部の問題については第一審強化方策札幌地方協議会(一審協)の議題としても提出しているとのことであった。
 首都圏に属する当会と、司法過疎が問題となっている札幌弁護士会では、問題意識が異なる点もあるが、司法基盤が整備されていないと、いかに利用者が不便を被るかという実例を積み重ね、利用者の視点で改善を求めていくという運動の進め方では一致していることが確認できた。
 夜は懇親会で盛り上がり、翌日は、札幌地家裁滝川支部を見学した。滝川支部は、裁判官が常駐しておらず、特急で30分の距離にある岩見沢支部から2人の裁判官が填補にきている。
 その後、当地の法律事務所と法律相談センターを見学し、ついでに本場のジンギスカンも満喫して帰途についた。
(会員 浦田 修志)

新こちら記者クラブ 被告人の父の涙
 父親の背中は震えていた。「裁判長、どうか厳しい処分をお願い致します」。声を絞り出すと、法廷の証言台でおえつした。
 覚せい剤取締法違反などの罪に問われた男の裁判。執行猶予期間中に同じ過ちを繰り返した息子のために、父親は再び証人として証言台に立っていた。白髪の老父は言った。「もう私どもの力では、どうにもできんのです」
 一度は、監督を約束し、更生させると誓った。だが、できなかった。悔しさと、ふがいなさと。証言台でこぶしをぎゅっと握り締めていた父親は、最後に、涙を浮かべながら冒頭の言葉を述べた。
 その光景を見ていたら、私は、母にいつの日か言われた言葉をふと思いだした。「いくつになっても親は親。いつまでも親は子を心配するものなのよ」と。
 果たして証言台の父親は、どんな思いだったのか。その気持ちを想像すると、全くの部外者の私だが、男に対して「しっかりしなさいよ」と、心の中で叫んでしまった。
 当たり前だが、被告人に家族がいることもある。罪を犯すということは、被害者はもちろん、自分の大切な人も傷付ける。定められた刑以上に、犯した罪は重いのだ、とあらためて考えさせられた。
 男は懲役2年6月の判決を言い渡された。法廷を去る際に深く頭を下げた息子が扉の向こうに消えた後も、じっとその先を見つめていた父親の姿は、忘れられない。
(神奈川新聞 松島 佳子)

常議員会のいま 若手も自由に発言できる雰囲気
会員 種村 求(58期)
 私は常議員となるのが本年度が初めてであり、常議員会における審議事項や審議の進め方等具体的なことについては把握できていなかった。
 常議員となってみると、財政や規則に関する問題から日弁連への答申や各種会長声明に至るまで、常議員会の審議事項が当会内外の問題全般に幅広く及んでいることが実感できるようになった。また、自分が関わったことのない委員会経由で提出される議題については、私が問題点すら把握していなかった事項について理路整然と整理されているため刺激的で勉強にもなる。
 私は、常議員会について、「執行部の方針に異を唱える方が続出して激論が繰り広げられる」というイメージを抱いていた。しかし、実際には、正面からの反対意見はほとんどなく、「理事者提案事項についてはこのようにした方がより良いのではないか」という方向からの意見が多いように思う。
 また、常議員会には、若手会員であっても自由に発言できる雰囲気がある。
 私は、その雰囲気に甘えて自由に発言しているが、若手会員であっても、同期や支部を代表して常議員として選出されている以上、述べるべき意見は述べる必要があり、それが当会のさらなる発展につながると思う。今後も顰蹙を買わない程度に自由な発言を続けていきたい。

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