横浜弁護士会新聞

2010年11月号  −3− 目次

弁護士も加入できる労災保険!
神奈川県弁護士協同組合理事 青木 康郎
(1)万一に備え労災保険
 当会では、過去に複数の痛ましい業務妨害事件があります。当会会員としては、改めて業務妨害についての対策を考えなければならないと思います。
 事前に被害に遭わないように対策を講じるのが第一ですが、万一、何らかの事件・事故に巻き込まれてしまった場合の対策も重要です。また、必ずしも業務妨害に限らず、弁護士は仕事柄、事件・事故に巻き込まれる可能性が、他の職業より高いはずです。
 それらの事後的な手当の対策としては、各種保険(生命保険・損害保険・所得保障保険など)に入ることが考えられますが、意外と知られていないのが、雇用者・事業主の弁護士でも「労災保険」に加入できる事です。
(2)協同組合で特別加入
 神奈川県弁護士協同組合では、昭和63年から、労働保険事務組合を設立し、労災保険の面倒な事務手続きを一括して処理することで、組合員の弁護士の事務処理の負担の軽減に貢献してきましたが(事務委託料は加入者4名まで月額3000円、5名以上15人以下で月額6000円)、この事務処理を委託することで、通常は労災保険に加入できない事業主である弁護士が「特別加入」という制度で、労災保険に加入することができます。
(3)保険料は月1825円
 しかもその保険料は、最高額でも年間2万1900円(月当たり1825円)。
 いざというときの労災保険の存在が、被害を受けた労働者やその家族にとって、どれほど心強いものかは、労災を扱う弁護士なら誰でも実感しているところです。
 労働者なら加入が強制されている労災保険です。事業主とはいえ、実体は労働者である弁護士は、自分や家族のためにも是非とも加入しておくべきです。
 労災保険には、弁護士協同組合を通じてしか加入する術がありませんので、手続きは、神奈川県弁護士協同組合事務局(045−211−7712、担当上野)までお電話をどうぞ。
推薦の言葉
弁護士業務妨害対策委員会  竹森裕子委員長
 本年6月の前野義広弁護士に対する業務妨害事件のとおり、弁護士にとって身近な業務妨害に対する備えとして、労災保険に特別加入することを推薦いたします。

新こちら記者クラブ 報道とインターネット
 横浜地裁であった裁判員裁判の公判後、「遺体写真を見て吐いた」と会見で語る女性裁判員の記事をネットで読んだ。「覚悟が足りないからだ」などと批判的な書き込みもされていたので、女性は匿名とはいえ「本人は書き込みを見ただろうか。どう感じただろう」と想像した。
 一方、署名記事を書く自分。先輩や同期から「コラムが炎上した」なんて話も聞く。「それだけ影響があるってこと」と前向きにとらえる同僚もいるが、私はちょっと手放しでは喜べない。自分の名前は検索しないようにしているし、街宣活動されないか手に汗握ることもある。
 和歌山県太地町のイルカ漁を批判的に描いた米ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」上映を巡り、上映反対派の人たちがネットなどの呼びかけで横浜市内の映画館前に集まり、抗議活動をした。一方、上映を支持する人たちも同様にネットを通じて集まり、意見を交換した。その様子は動画サイト「ユーストリーム」で生中継。しばらくすると「アメリカで見ていた人からメッセージが来ています」と司会者。私はと言えば、このとき初めてユーストリームを知った。
 冒頭で触れたブログでは、裁判員裁判の是非についての議論も見られた。ネットは有益な議論空間なのか。ネット論壇について知ろうと本や雑誌を手に取ってしまったが、こんな新聞記者では、新しいメディアの波にのまれてしまうのだろうか…。
(毎日新聞横浜支局 山田 麻未)

常議員会のいま 議長の腕でぴりっと締まった会議に
会員 向井 邦生(51期)
 常議員会開催の1週間前になると、開催のお知らせと共に議案の資料一式が送付されてきます。ずしりと分厚いその資料をぱらぱらとめくっていると、弁護士会が直面している様々な問題について執行部の方々が苦労して議案を取りまとめているんだろうなあ、などと感じます。
 常議員会では、提出された各議案について、執行部担当者からの概要の説明の後、質疑応答、意見の表明などがなされますが、様々な角度から鋭い質問、意見が飛び交い、充実した議論がなされています。
 例えば、会務経験豊富な会員から「ここはどうなっているのか」といった鋭い質問がなされ、それに対して説明上手な若手副会長が流暢に説明をし、一件落着かと思われたときに、会長経験者の会員が別の角度から更に鋭くつっこむ、といった具合で、誰かが発言をするたびに議論が深まっていくことになります。それでも、いたずらに時間が過ぎていくようなことはなく、ぴりっと締まった会議になっているのは、議長の腕によるところが大きいのだろうと思っています。
 若手、中堅の意見でも皆さんじっくりと聴いてくれますので、一言言いたい、という会員は、常議員に立候補することをお勧めします(もちろん意見が通るかどうかは別問題です。念のため)。私も、残された任期の間、弁護士会の役に立つような意見を少しでも言えれば、と思っています。

生徒達の量刑判断は? 出前授業(老松中学校 9月14・16日)
 9月14・16日の両日、法教育委員会の活動として、横浜市立老松中学校の3年生4クラスを対象に、出前授業を実施した。
 テーマは、量刑判断。生徒達に具体的な犯罪事例を与え、どの程度の量刑が妥当するかを個別に検討した後、グループディスカッションを行い、それぞれのグループが出した量刑を発表するというものであった。
 量刑判断にあたっては、事前に、犯罪行為と量刑のバランス、そして、一つの事例に内在する個別事情、例えば、犯行動機に酌むべき事情があること、被害弁償が行われていることなどが量刑判断のポイントになることを説明した。
 生徒達は授業に真剣に取り組み、自分の意見を主張し合っていた。生徒達が発表した量刑判断を聞いてみると、実際の裁判に近い量刑であったことに驚かされた。生徒からは質問も多く、中には「その事例(子供の入院費用を払うために窃盗をした事例)で、もし犯行動機が遊ぶ金欲しさだったら量刑はどうなりますか」など、鋭い質問もあった。
 この授業を担当している鈴木教諭によると、「社会に存在するペナルティにはどのような役割・意義があるか。また、一つの犯罪行為にどのような罰が与えられるべきか。それを生徒自身で考えて欲しい。それがこの授業の目的である」とのことであった。今後の刑事裁判を担う、若い世代に対し、量刑の意味を伝えることのできる大変有意義な授業となった。
(会員 高宮 隆吉)

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