日本弁護士連合会副会長 高橋 理一郎 |
日本弁護士連合会(以下「日弁連」といいます)副会長に就任してちょうど半年が経ちました。ご承知のとおり、日弁連は、狭義の司法分野にとどまらず、国内外での多岐にわたる法的課題に取り組んでいます。また今年度は、「市民の目線で第二次司法改革へ」というスローガンのもと、「司法修習生の給費制維持」や、法曹養成、法曹人口問題などいくつかの重要な課題について、積極的な活動を展開しています。しかし、こうした活動の報告をすることは、許された紙幅では困難なので、私の担当分野に限りごく簡単に報告をさせて頂きます。 |
私が担当している委員会等は、若手法曹サポートセンター、弁護士業務改革委員会、中小企業法律支援センター、リーガルアクセスセンター(LAC)などです。分かり易くいえば、大量弁護士登録時代の就職や独立開業問題に対する支援・対策などと、そうした活動と表裏の関係にある弁護士の就業先や活動領域の開拓・拡大及び弁護士業務の在り方などを担当しています。それはまた、市民が弁護士に容易にアクセスできるようにするための諸課題に対する取り組みでもあります。 |
就職支援については、弁護士人口が急増する中で、これまでも日弁連と弁護士会が総力をあげて取り組んできましたが、年々その厳しさは増してきています。市民の信頼の基礎となる弁護士の質は、これまでは先輩弁護士の下で多くの事例を経験させることによって維持されてきたものと考えています。またこうした環境の厳しさが、法曹になるまでの経済的負担と相まって、法曹界にとって有為な人材をさらに遠ざけることにならないかということが懸念されます。 |
他方、企業内弁護士、官公庁内弁護士、地方自治体内弁護士の数は、少しずつながら増加していますが、弁護士人口の増加に見合うほどには増えていません。日弁連としては、各地でのキャンペーン、その他関係機関の協力などを得ながら、その拡大のために努めていますが、いずれも時間を要するものと思われます。そして、こうした諸課題に加えて、弁護士の多様なキャリアステップやプランも取り込んで活動しているのが若手法曹サポートセンターです。 |
この4月から「ひまわりホットダイヤル」を立ち上げ、全国どこででも中小企業が初回無料で法律相談を受けられる制度を運営しています。これが中小企業法律支援センターです。この制度は未だ中小企業に知られていないのが目下の課題ですが、小規模・零細企業にとってはセーフティ・ネットとしての役割が重要です。また、中小企業庁との連携のもとでの活動は、中小企業分野での弁護士の役割を大きく拡大していくことになるものと期待されるところですし、弁護士の業務のあり方にも大きな影響を与える活動になるものと思っています。 |
その他多岐にわたる活動を担当していますが、その中でも注目されるのは、権利保護保険の拡大、不祥事における第三者委員会ガイドライン、専門登録制度、スポーツ法の制定、地方自治体に対する弁護士の関与などです。 |
任期中にどこまで仕上げられるかわかりませんが全力投球で取り組んでいますのでよろしくお願いします。 |
9月3日、当会会館にて「弁護士業務妨害への対策と対応」と題する緊急研修が開かれた。本研修は、今年の6月2日、前野義広会員が事務所内で執務中に担当事件の当事者によって刺殺されるという大変痛ましい事件が発生したことを受けて臨時で開催されたものである。研修会には当会会員及び当会会員所属事務所の事務員合わせて89名が出席した。私の事務所からも弁護士3名のほか事務員2名が出席した。 |
実は私の事務所においても、前野会員の事件が起きて間もないころ、事務所入口ドア(外側)に貼り付けてある弁護士のネームプレート(全部で6名分)のうちある特定の弁護士(1人)のネームプレートだけが油性マジックペンで黒く塗りつぶされるという事件が発生しており、事務所全体が業務妨害対策の必要性を強く感じていたのである。 |
水地啓子会長の開会挨拶の後、業務妨害対策委員会委員長の竹森裕子会員より前野会員に対する業務妨害事件の概要報告がなされ、引き続き小島周一会員より当該事件発生直後における有志の対応についての報告があった。 |
次に、伴広樹会員より弁護士業務妨害への一般的な対策に関する講義があり、最後は、小島会員他3名をパネリストとしてパネルディスカッションが行われた。妨害の可能性がある者と交渉する際の基本姿勢や交渉の方法・場所等に関する伴会員の具体的な話は大変参考になるものであった。 |
また、パネリストの1人である熊谷靖夫会員からは、弁護士業務妨害的な電話に対して電話機や電話設備の機能を利用した対応方法について具体的な話がなされ、これも大変参考になった。 |
さらに、同じくパネリストの1人である法律事務所事務職員の成松広持氏からは、弁護士不在の場合に予約のない者が突然来所した場合の対応方法など、事務職員の立場からの実践的な話を伺うことができた。ただ私にとって一番印象に残った言葉は、どんな弁護士でも自分が業務妨害の渦中に置かれてしまうとどうしても判断がぶれやすくなってしまう、だからこそ決して自分1人で抱え込まずに第三者に相談し冷静な判断を求めるということが大事だ、もっとも業務妨害を受けた者から積極的に他の者に相談するのはなかなか難しく、周囲の者が積極的に声をかけ動いてあげることが必要だとする小島会員の言葉であった。 |
私は、今回の研修を機会に、今後、事務所内の対策のほか、他の事務所の弁護士らとの協力体制作りも意識していきたいと思う。 |
(会員 田中 栄樹) |