当委員会は、豊かな自然を体感しながらその保護に関わる諸問題を探ろうと、毎年離島を中心として視察調査を重ねている。今年は6月11〜14日、10人の委員で島根県の隠岐諸島を訪ねた。予備知識は少なかったのだが、行ってみたらそこは、不思議の玉手箱であった。 |
隠岐は島後(どうご)と島前(どうぜん)とに大きく分かれる。島後は1つの大きな島だが、島前には3つの有人島が近接する。隠岐あたりは地質学的に様々な時代を経たため、各所に貴重な岩石や地層が見られる。隠岐片麻岩は30億年前の鉱物も含むという日本最古の岩石。石器時代に矢じりに使われた黒曜石は、2万年前に大陸との交流をもたらした。植生も、北方系、南方系、高山性、大陸性等の植物が近くに共存するというありえなさ。いずれも研究者たちを驚かせる。 |
歴史文化的にも、いにしえに後鳥羽上皇や後醍醐天皇が流され、江戸時代には北前船の寄港地として栄え、多くの神社や祭、隠岐相撲などの神事・伝承が息づき、とても一筋縄では行かない。そして風光明媚な大自然が残り、海の幸に恵まれているという素晴らしさ。 |
このような自然環境・歴史・文化等の地域資源は大変貴重なものであり、昨年10月、隠岐全体が「日本ジオパーク」に認定された。そして次はユネスコが支援する「世界ジオパーク」への登録を目指している。ジオパークとは地球活動の遺産を含む自然公園の意味であり、その地域の保護と活用の両方を図っていくツールとなる。 |
今回我々は、隠岐ジオパーク構想を推進し、地元を知り尽くしているガイドさんや町職員さんらの案内で、短時間に実に深く隠岐を堪能・学習させてもらった。 |
摩訶不思議な様々な植生、岩石に宿る太古の息吹、よじ登った絶壁からの比類なき絶景、シーカヤックで漕ぎ抜けた青の洞窟の神秘、幽谷に隠された麗しき滝と愛らしいオキサンショウウオ、船で渡った島前の摩天崖と雄大な放牧地、旨し地酒飲み比べの饗宴…
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公共事業減による産業の冷え込みや漂着ゴミ問題など島が直面する負の側面も教えられた。しかしジオパーク構想を担う彼らは、実にエネルギッシュで前向きで、そして郷土の豊かな諸資源への誇りに満ちていた。 |
我々もまた、貴重な日本遺産をよく知り、その価値を理解し、畏れとともに守り伝えていくことが大切だと、ひしひしと感じさせられた。隠岐、いい旅であった。 |
(会員 畑中 隆爾) |
6月5日午前11時、岡村共栄会員のクルマが小田原駅前で待っていた私たちをピックアップして仙石原に向かう。 |
今回のスケッチ旅行に参加を予定しているメンバーは8人だが、夕刻に宿で合流するまでは、自由行動。岡村車に乗り込んだのは、稲生義隆会員、小川芙美子さん(千葉県弁護士会)ら5人。スケッチポイントを探すも適当な場所が見つからず、結局箱根湿生花園の中で描くことになった。 |
岡村会員は、花園から見えるホテルや背後の山を油絵で。稲生会員は、草取りをしている人たちとそれを囲む新緑を水彩で。小川さんは、ニッコウキスゲや水芭蕉の生える池を水溶性クレヨンで。―しかし、3時半頃にはポツリポツリと雨が落ちてきたので撤収し、車の中から、明日のロケハンのために芦ノ湖を一周。「中川一政画伯が駒ヶ岳を描いたのはここか」などと確認しつつ宿に入った。 |
別行動を取っていた山本一行会員らは、それぞれスケッチを仕上げて先着。今日から参加する筈の井上文男会員のケイタイに電話すると、なんとゴルフ中で、「明日は参加するからカンベンして」。 |
夕食のあとはそれぞれの作品を並べて合評会。稲生会員の水彩画に評価が集まったが、「絵の具がよいからではないか」と辛口なのは岡村会員。メンバーそれぞれの「年季」や「月謝」のかけ方に差があるので、レベルの差はかなりのものがある。しかしお互いに「ヘタクソ」と言うのは禁句。呑みながら作品談義に盛り上がりつつ夜は更けて行く。
翌朝から参加した井上会員は、山本会員と共に「中川一政ポイント」に挑戦するため、自分の車で芦ノ湖を見下ろすスカイラインへ。残りのメンバーは、(季節はずれの)ススキ野原やガラスの森美術館周辺に散らばる。 |
昼食のためにイタめし屋に集合して、また合評会。 |
帰りの車の中で、稲生会員のレベルアップに貢献した(?)絵の具のメーカーが話題になる。「シュミンケというドイツのメーカーですよ」と稲生会員。「今度ドイツへ行く機会があるから、向こうで買うわ。メーカーの名前はシミンケン(市民権)と覚えておけばいいわね」と小川さん。「“生存権”と言いまちがえないようにね」とまぜっかえす岡村会員。 |
騒いでいるうちに車は小田原駅に着いた。―ある日のキャンバス・アバウトのスケッチであった。 |
(会員 大川 隆司) |