4月に横浜に転勤し、久しぶりに裁判取材を担当している。今春まで2年間は大阪府警担当で、25人が死傷した個室ビデオ店放火事件や相次いだ児童虐待事件を取材した。捜査当局と同時進行で材料を集め、筋書きの見えぬ事件の全容を少しずつ解き明かす取材から、そろった材料の吟味が主となる法廷へ。攻守が入れ替わった気持ちだ。
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裁判員裁判の取材は初めてで、変化の大きさに戸惑っている。 |
特に驚いたのは、検察側の立証方法の変化だ。ビジュアルを駆使した冒陳メモを用い、主張を伝えるため細やかな工夫がある。 |
一方の弁護側。弁護士会新聞だから思い切って率直な感想を書くと、検察の勢いに負け気味ではないだろうか。 |
例えば、被告が供述する事実関係の信用性が争点になった裁判。証人尋問は精神鑑定の評価にかかわる大事な内容だったのだが、そのことがわかるように説明されたのは残念ながら尋問後。尋問の最中は、もっとも白黒つけたいポイントがどこなのかがイマイチわからなかった。 |
法律家にとっては言わずもがなだったのかもしれない。公判前整理を繰り返し、裁判官と検察官は争点を熟知しているという事情もあるだろう。だが、裁判員は素人だし、事件については真っさらだ。 |
「まさかと思ったが午前中に選任され、あれよあれよという間に法廷にいた」。裁判員経験者に共通する感想だ。「もっと心の準備の時間がほしい」という人もいる。そんな裁判員に主張をどう伝えていくか。検察も弁護側も、きっとまだまだ改善の余地がある。 |
法廷での有意義な攻防を期待しています。 |
(朝日新聞横浜総局 太田 泉生)
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