横浜弁護士会新聞

2010年6月号  −3− 目次

昨年度 横浜合格 62名 事務職員能力認定試験・研修会について
 昨年度から、日弁連の「事務職員能力認定制度規則」に基づく能力認定試験と研修会が、全国で実施されている。
 本制度は、法律事務所に勤務する事務職員が弁護士業務を補助するために必要な知識・技能を習得し、その能力を向上させることによって法律事務所の事務処理能力を高め、ひいては国民に対してより充実した法的サービスを提供することを目的としている。
 制度の具体的内容は、(1)毎年10月から翌年5月にかけて全8回にわたって法的手続や関連実体法・事務職員の心得等につき、全国一斉に統一的な研修を実施する、(2)受講資格は法律事務所勤務歴2年以上であること、(3)研修のレベルは5年程度の勤務経験があれば知っているべき中級程度のもの、(4)研修終了者を対象として7月に能力認定試験(出題数60問、4肢択一のマークシート方式、六法持ち込み可)を実施して、合格者には日弁連が合格証書を発行し、合格者名簿に登載する、というものである。
 昨年度は全国で2640名が研修を受講し、能力認定試験受験者は2138名、そのうち合格者は1555名(うち横浜は62名)であった。今年度の研修申込者は全国で1302名であり、7月25日には第2回能力認定試験が実施される。
 研修受講者からは、「今まで場当たり的に対応していた手続について体系的な理解ができた」等の声が寄せられている。今後も多数の事務職員の参加が期待される。
(日弁連弁護士業務改革委員会委員 石井 誠)

新こちら記者クラブ 顕著に表れた市民参加
 数字は雄弁に語る、と思う。
 100%―。裁判員裁判開始から約1年の4月末時点で、神奈川県内の公判で、判決が執行猶予の被告に保護観察も付けた割合だ。「裁判官も被告の立ち直りを考えるが、それ以上に市民は判決後の被告の生活に関心を寄せている」とある法曹関係者。市民参加の影響が顕著に表れた。
 当事者の保護司は、この変化を好意的に受け止めている。いままでは、保護観察中の元被告が再犯に及ぶなど制度の不備が明らかになった際、注目を集めていたからだ。
 活動はボランティア。だが、更生保護のプロである保護監察官と二人三脚で、元被告や少年の社会復帰を支えてきた自負がある。ある男性保護司は「裁判員制度をきっかけに関心が広がれば、新たな担い手の勧誘もしやすく、周囲の協力も得やすくなる」と話してくれた。
 市民裁判員や、更生保護に携わる保護司の思いが高まる中で、刑事弁護を担う弁護士に注がれる視線も異なってきているはずだ。「被告人は本気で贖罪を誓い、更正できるのか」。この命題への説明責任が重みを増す。
 裁判員の理解を助ける説明の変化が見られる一方、気になることもある。弁護人が執行猶予を求める際の「若いから」「謝罪しているから」という説明だ。前例踏襲では、個々の被告の事情を言い表せないこともある。「なぜ社会内での更正が必要なのか」。一記者としても、納得ができる弁護人の一言を是非聞きたい。
(神奈川新聞 戸田 貴也)

常議員会のいま 決算・予算に注目
会員 石川 裕一
 私が初めて当会の常議員会を意識したのは「弁護士法人かながわパブリック法律事務所(かなパブ)」の設立準備のときであった。
 ご存知のとおり、かなパブは臨時総会での議論の末、過半数の賛成を得て昨年9月に設立が実現した。かなパブの設立にあたっては、常議員会でも複数回議論していただき、私はその資料作成や議案説明に関与することができ、昨年は常議員会を肌で感じた年であった。
 そのような私が、本年度は常議員の一人として関わらせていただくこととなったのだが、実は、宮澤廣幸副議長が中学校の、浦田修志副会長が小学校の大先輩にあたるなど、本年度の常議員会には妙な縁を感じている。縁深い常議員会にご心配をおかけしないよう、かなパブの所員としても精一杯努力していきたい。
 さて、本年度の常議員会は、すでに4月に2回開催され、うち第2回では当会の平成21年度決算・平成22年度予算が議案となった。これまで弁護士会の活動・事業について、予算・決算という視点から考えたことはなかったのだが、常議員会での議案説明やご意見を拝聴して、これらの活動・事業がどのように計画され、どのように実施されていくのかという流れを感じることができ、非常に勉強になった。
 決算・予算には、弁護士会をはじめ、組織の考え方や方針がちりばめられていることが分かり、今後はそのような視点でも、決算・予算を見てみたいと考えている。

消費者関連法をわかりやすく 会員研修・消費者法入門
 4月23日午後6時から、『消費者法入門』―消費者関連法の概要と消費者契約法を学ぶ―と題する消費者分野の初心者向け研修が、当会消費者問題対策委員会委員の鈴木義仁先生を講師に招いて、弁護士会館で行われた。
 この研修は、登録5年目以内の若手弁護士を対象に、「とにかく、消費者分野にどんな法律があって、どんなようなことが規定されているのかのイメージを持つ!!」ことを目的としたものである。
 当日は、具体的事例をもとにどのように解決するのか、講師と受講者が一緒に考えていくという方法で進められた。余談だが、事前に用意されていたレジュメが事例に対するQ&A方式になっていたことから、それを見た受講生一同が、「指名されて、問題に対して答えを言わなければならないのではないか!?」と極度に脅え、講師と目があってあてられることがないように、必死に顔をあげないようにしていたのがとても印象的であった。
 程よい緊張感(?)もあるなか、実際の事件をもとにしてつくられた事例を使っての講義だったので、消費者関連法の概要をとてもよく理解することができた。
 規制緩和の流れの中、事業者と個人が直接対峙しなければならない機会が増えているように思う。しかし実際には「情報の質、量、交渉力」に格差がある個人が事業者と直接対峙するというのは大変なことであり、我々司法に求められる役割は増すばかりである。それぞれが『消費者法入門』で学んだことをもとに、積極的に消費者事件に関わっていく決意を新たにした有意義な夜であった。
(会員 太田 伊早子)

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