憲法協議会委員 福田 護 |
時ならぬみぞれ空の3月9日夕刻から、田鎖麻衣子弁護士を講師にお願いして、学習会を開催した。田鎖弁護士(二弁)は47期、横溝副会長(当時)とは司法研修所同期同クラスで「マイちゃん」「クミちゃん」の間柄、浦田副会長(現)も同クラス。日弁連拘禁本部事務局次長等を精力的にこなし、国連自由権規約委員会の日本政府報告書審査の際などには、日弁連を代表し、ジュネーブに飛んでロビー活動を展開する、さわやかなスーパーウーマンである。 |
日弁連は、かねてから国際人権(自由権)規約の個人通報制度(第一選択議定書)の批准問題に取り組んできたが、すでに113か国が批准している中で、日本ではこれまで現実的な問題とされることのないまま、棚上げにされてきた。しかし、民主党政権が誕生し、千葉景子法務大臣もその就任会見で批准を実現したいと述べて、この問題はにわかに現実性を帯びてきた。 |
たとえば、戸別ビラ配付に対する刑事処罰が最高裁で是認される事件が続いたが、個人通報制度が実現すれば、これを自由権規約一九条違反等として、自由権規約委員会に申立てをし、審査を経て、委員会から政府に対する「見解」を出してもらうことができる。それは日本の司法と人権のありようを大きく変えていく可能性のある、とても実践的な、継続的に取り組むべき課題である。 |
田鎖講師からは、2008年10月の日本政府報告書審査の現地の様子が写真を交えてリアルに紹介され、日本に対する勧告(総括所見)の主なポイントが丁寧に説明された。その上で、個人通報制度による具体的な人権侵害救済事例を挙げて制度の重要性が語られ、法曹に対する自由権規約の周知・教育、個人通報申立てへのバックアップ体制づくりの必要性など、実践的な課題が提起された。 |
子育てのため1時間ほどで切り上げるはずだった懇親会も、結局最後までお付き合いいただき、クミちゃんと帰途についた講師を、いつしか雪に覆われた交差点の舗道で見送ったのであった。 |