横浜弁護士会新聞

2010年5月号  −3− 目次

実務への影響必至! 民法(債権法)改正シンポジウム 定期開催中
 債権法改正に向けた法制審議会民法(債権関係)部会での審議が急ピッチで進んでいる。検討の対象は民法第三編(法定債権を除く)と第一編の一部(意思表示、消滅時効など)と広範だが、2か月に3回のペースで部会が開催されており、年内に検討が一巡する予定である。その後、中間的な論点整理が行われ、来年4月には1回目の意見公募(パブコメ)手続がとられることになっている。
 しかも、これまでの検討事項を見ると、債務不履行による損害賠償責任の帰責根拠を過失責任主義ではなく契約の拘束力に求めたり、債務不履行解除の要件として帰責事由は不要とするといった、債務不履行法制の根幹に修正を加える方向の提案や、債権者代位権の事実上の優先弁済機能を否定したり、本旨弁済を詐害行為取消権の対象から除外するといった、従来の判例法理とは異なる提案など、改正が実現すれば実務への影響が避けられないものが多数含まれている。
 そこで、日弁連は、改正の動向について会員への情報提供を行うため、3か月おきに民法(債権法)改正ミニシンポジウムを開催している。
 3月29日に行われた第3回ミニシンポでは、前記法制審部会の委員・幹事による審議状況の報告の後、(1)売買と請負、(2)危険負担と解除、(3)保証と説明義務という3つのテーマを取り上げ、瑕疵担保責任を債務不履行責任の特則と捉えた場合の実務的対応、解除に帰責事由を不要とした場合の危険負担制度の位置付け、保証における説明義務の範囲・程度やその違反の効果等について具体的事例に即して検討を加えた。
 当会でも毎回TV中継を行っているので(次回は6月に開催予定)、数年後に慌てないためにも、是非ご参加いただきたい。
(会員 林 薫男)

新こちら記者クラブ 刺激を受けた同年齢の活躍
 新聞記者でいえば“遊軍”のポストにいた4年前、司法過疎地域の実態を取材したいと思い、法テラス発足に伴って長崎の離島・壱岐に赴任した25歳の“スタッフ弁護士”を取材した。修習明けで都内の法律事務所に勤務していた彼が、なぜ縁もゆかりもない壱岐を目指すことにしたのか。インタビューすると出てきた言葉が、「島にはサラ金や暴力団はいるが、弁護士はゼロ。埋もれた事件を堀り起こしたい」だった。
 記者の仕事の本質も同じ。当局による発表ものだけでなく、自分が目を付けたからこそ世に問えた、そういった報道ができることこそ醍醐味だ。同年齢である彼の言葉に刺激を受けながら、壱岐赴任前の事前下見に同行した。島で見かけるのは高齢者ばかり。一軒の80代夫婦宅を訪ねると、シロアリ駆除や訪問販売などの悪質業者から“離島手数料”と銘打たれた謎の大金を吹っかけられ、約400万円の被害に遭ったという。「いえいえ、騙された私たちが悪いんですから…」と申し訳なさそうに話す老夫婦に、彼は一言発した。「頑張って働いてきたお金でしょう。私、来月来るので一緒に取り返しましょう!」
 あれから4年。この原稿を書くにあたって久しぶりに彼の名前をネット検索すると、その活躍の様子が幾つもの新聞記事に掲載されていた。※以下、読売新聞抜粋――『“法テラスさん”。長崎県壱岐市にある「法テラス壱岐」のスタッフ弁護士・Aさん(25)は、島の人からそう呼ばれている。』…彼は文字通り、“事件を堀り起こし”、3年間で860件超の相談を受理し、30件余りの刑事事件を手掛けた。地元・横浜の記者クラブでゆるりと過ごしていた私に初心を思い返させてくれたと同時に、風の噂で、壱岐で意気投合した可愛い女性と結婚したとの嬉しい便りも耳にし、同年齢である私も頑張らなければと、色々な意味で身を引き締めた。
(フジテレビ報道局 社会部 海野 麻実)

今こそ、人権の国際化を ―国際人権規約と個人通報制度批准の意義―
憲法協議会委員 福田 護
 時ならぬみぞれ空の3月9日夕刻から、田鎖麻衣子弁護士を講師にお願いして、学習会を開催した。田鎖弁護士(二弁)は47期、横溝副会長(当時)とは司法研修所同期同クラスで「マイちゃん」「クミちゃん」の間柄、浦田副会長(現)も同クラス。日弁連拘禁本部事務局次長等を精力的にこなし、国連自由権規約委員会の日本政府報告書審査の際などには、日弁連を代表し、ジュネーブに飛んでロビー活動を展開する、さわやかなスーパーウーマンである。
 日弁連は、かねてから国際人権(自由権)規約の個人通報制度(第一選択議定書)の批准問題に取り組んできたが、すでに113か国が批准している中で、日本ではこれまで現実的な問題とされることのないまま、棚上げにされてきた。しかし、民主党政権が誕生し、千葉景子法務大臣もその就任会見で批准を実現したいと述べて、この問題はにわかに現実性を帯びてきた。
 たとえば、戸別ビラ配付に対する刑事処罰が最高裁で是認される事件が続いたが、個人通報制度が実現すれば、これを自由権規約一九条違反等として、自由権規約委員会に申立てをし、審査を経て、委員会から政府に対する「見解」を出してもらうことができる。それは日本の司法と人権のありようを大きく変えていく可能性のある、とても実践的な、継続的に取り組むべき課題である。
 田鎖講師からは、2008年10月の日本政府報告書審査の現地の様子が写真を交えてリアルに紹介され、日本に対する勧告(総括所見)の主なポイントが丁寧に説明された。その上で、個人通報制度による具体的な人権侵害救済事例を挙げて制度の重要性が語られ、法曹に対する自由権規約の周知・教育、個人通報申立てへのバックアップ体制づくりの必要性など、実践的な課題が提起された。
 子育てのため1時間ほどで切り上げるはずだった懇親会も、結局最後までお付き合いいただき、クミちゃんと帰途についた講師を、いつしか雪に覆われた交差点の舗道で見送ったのであった。

わたしたちみみんとのるんです 親しまれる弁護士になるようがんばります。よろしく!
 昨年暮れの弁護士フェスタでデビューした、ウサギとレッサーパンダのキャラクター。法律相談センターでの活躍を期待される2人の名前が、300近い応募作品の中から、みみんとのるんに決定した。選考にあたった同委員会と理事者が、最も親しみやすく覚えやすいとして評価したのが入選の理由。
 みみんは長い「みみ」で人の話をよく聞き、のるんは困っている人のために相談に「のる」という気持ちがこめられているとのこと。
 ホームページをはじめ、様々な場面に登場することになるみみんとのるん。現段階で予定されているのは、バス広告、電話帳掲載などであるが、法律相談センターでは、2人の個性を生かした広報活動を展開したいとの意気込みを示している。
(会員 松井 宏之)
のるん みみん

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