裁判員裁判が施行されてから早くも半年が経過しようとしているが、県下においては、9月29日から10月1日に第1号となる事件(起訴罪名:殺人)の公判が、10月5日から8日に第2号となる事件(起訴罪名:現住建造物等放火)の公判がそれぞれ開かれ、判決に至った。
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第1号事件については、高原将光会員、川島明子会員が当会の先駆者として活躍し、第2号事件については、安藤肇会員、菊池博愛会員が活躍した。第2号事件は、全国で初めての「認定落ち」となり、建造物等以外放火罪として、検察官の懲役4年の求刑に対し、懲役3年執行猶予5年(保護観察付)の判決を得て、新聞等にも広く報道されたところである。いずれの弁護人も、原稿を読まない、適宜パワーポイントを利用して図示するなど、裁判員に理解させ、裁判員を説得するための努力を最大限実行していた。その努力が、結果として結実したものである。 |
裁判員裁判に対する当会の課題は、言うまでもなく、弁護人の「質」と「量」の確保にある。弁護人が、従前と変わりのない書面に偏った弁護活動をすれば、6名を占める裁判員を議論から置き去りにし、被告人のための主張を伝えきれないおそれがある。また、いかに会員数が増えようとも、一部の有志に頼るのでは、現実問題として、年間120件とも想定される県下の裁判員裁判を支えきることは不可能である。とかく制度論を言われることも多いが、現に被疑者・被告人がいる以上、県下の刑事弁護を崩壊させることは許されない。我々ひとりひとりが、会全体の問題として、刑事弁護を支える意識を持ち、実行していくことが肝要と考える。 |
裁判員制度運用委員会は、今後も、会員により良い弁護活動をしてもらうため、裁判所への制度改善の提言、会員に対する有益な情報提供、技能向上のための研修等を行う予定である。情報提供の一環として、本年4月から、「裁判員裁判ニュース」として、毎月1回FAXにより、裁判員裁判に関する情報提供を行っている。また、制度改善のための情報収集として、弁護人になった会員に対し、活動内容に関するアンケートと判決書等の提供を依頼して収集し、日弁連裁判員本部に提供している。また、11月28日、29日には、日弁連裁判員本部の講師が、当会会館において、ビデオ撮影なども活用して弁論の方法等を検証し合う実演型研修を実施する予定である。 |
県下の裁判員裁判を支えるべく、今後ともご協力をお願いします。 |
(裁判員制度運用委員会副委員長 伊東 克宏) |