横浜弁護士会新聞

2009年10月号  −1− 目次 

都市型公設事務所オープン
 9月1日、神奈川県初の都市型公設事務所である弁護士法人かながわパブリック法律事務所(以下、「かながわパブリック」)がオープンした。場所は、横浜地裁本庁舎や、みなとみらい線の日本大通駅の近くである(横浜市中区弁天通2丁目21番地アトム関内ビル6階)。このかながわパブリックは、国選弁護事件、民事扶助事件その他の公益的事件の相談及び受任や、東京高裁管内における弁護士過疎地域および弁護士偏在解消地域に定着する弁護士の養成を図ることを予定している。このような公設事務所としての特色を除けば、様々な事件を手広く扱う、通常の法律事務所と変わらない。
 現在、弁護士3名に事務局3名で始動しているが、年末には新人が入る予定もある。3弁護士にそれぞれの経緯や意気込みを聞いた。
 
北條将人会員(55期)
 私は、弁護士3年目で東京から熊本県の天草へ行き、ひまわり公設事務所で業務を行いました。弁護士は自分一人なので、事件処理にあれこれ悩みました。
 しかし、依頼者にとても感謝されるという経験を幾度となく味わい、達成感を得ると同時に、弁護士が役に立つことがどれほど多いかということを理解してもらうことが必要だと感じました。
 そこで、天草から東京に戻った後、石川先生から話があり、新しく立ち上げるのも面白いのではないかと思い、また、石川先生の熱意にも打たれ、かながわパブリックに加わりました。
 一つ一つの事件を丁寧に取り扱うことによって、依頼者の方々に感謝していただけるようがんばります。
 
川島明子会員(58期)
 私は、以前、東京の法律事務所で事務員をしていました。事務員の立場で弁護士業務に関わる中、依頼者の方々、特に高齢者や女性の方々から感謝されるということが何度もありました。
 そこで弁護士になったら様々な事件を取り扱いたいと思い、登録当初から公設事務所で仕事をすることを希望していました。
 ここ横浜にも、弁護士にどのようにアクセスしたら良いかわからない方がまだ多くいらっしゃると思います。かながわパブリックの存在を広く知っていただき、気軽にご相談に来ていただける事務所にしたいと思っています。
 
石川裕一会員(55期)
 私は、弁護士3年目で横浜から高知県の安芸のひまわり公設事務所に行きました。横浜に戻ってからも、地方の弁護士過疎への対処を自然増に任せるわけにはいかないと考え、また、自分のひまわり公設事務所での経験を直接伝える場が少ないことを残念に思っていました。
 かながわパブリックではおそらく初の試みとして、都市型公設事務所としては所長をおかず、地方の公設事務所から戻ってきた弁護士中心の体制となっています。弁護士は6年以内に退所することになっているため、地方の公設事務所や、弁護士任官から戻ってくる弁護士の受け皿になり得ます。その他にも多くの可能性も秘めていると思います。
 会員の先生方からも新たな意義を見いだしていただければ、さらに新しい面を有する事務所に成長していくことができるのではないかと思います。よろしくお願い致します。

被疑者国選弁護制度が拡大されて
 現状報告
 5月21日、被疑者国選弁護の対象が、死刑・無期又は長期3年を超える懲役・禁錮に当たる事件にまで拡大された。
 本部と全支部を含めた短期間の平均では、対象事件で逮捕された被疑者の約7割が被疑者国選弁護を申込み、その人数は、通常期間では1日当たり14〜15人、それが夏期休暇期間に入ると7〜8人と減少した。この傾向が一時的なものかどうかは不明である。
 これに対し、被疑者国選弁護を担当する弁護士の数は、重複登録を除くと本部支部合わせて合計518名である。
 本部でも被疑者国選を担当する弁護士が充分足りているとは言い難いが、支部の場合はもともとの弁護士数が少ないので、事件が集中すると、配置していた登録弁護士を全て使い切ってしまうという事態も発生しやすい。
 できるだけ多くの会員に、被疑者国選弁護人名簿に登録していただきたい。
 
 問題点
 被疑者の権利を守るためには逮捕後できるだけ早く弁護人がつく必要がある、これが被疑者国選弁護制度の理念のはずである。
 ところが、最近、初回接見の遅い例が報告されている。ひどいものでは、選任されてから10日以上後に初回接見を行った例もあると聞く。これでは弁護人がついた意味がない。
 被疑者国選弁護制度の理念に鑑みて、できるだけ早期に初回接見を行うようにしていただきたい。
 
 注意点
 被疑者国選弁護事件においては、被疑者段階での接見報酬が支払われる。この接見報酬を請求するためには、接見時に接見資料用紙を管理係から受取り、接見申込書の下において書き込むことで複写し、それを法テラスに提出する。被疑者段階での接見では忘れないように注意が必要である。
(刑事弁護センター運営委員会 副委員長 安田 英二郎)

山ゆり
小さいころから本を読むのが好きだった。特に、安価で携帯が容易な文庫本の存在を知ってからは、小遣いを本代に費やすことが多くなった。中高生の頃は、周五郎、清張、司馬遼などを乱読したが、所謂海外の名作文学というものは敬遠していた。どことなく高踏的で難解なイメージがあったのだ
しかし、少しずつ挑戦をして、娯楽的な意味でも面白いものが多々あることを知った。その筆頭は、「レ・ミゼラブル」。まさに、一読、巻を置くあたわず、それまで敬遠していたのが後悔された
どうやら、世界文学の名作と称揚される作品には、血湧き肉躍るといった形容があたるものが数多くあるようなのだ。そんなことは分かっているよとお考えになる方も多いと思われ、正直、このようなことを書くのは恥ずかしさもあるのだが、何か勿体ない、人生で忘れ物をしているような感覚があるのは否めない お月見
現在、日本の出版界では海外文学の読者の裾野がなかなか拡がらないという。読者が少なければ、紹介・翻訳される本も当然増えない。そこで、秋の夜長を自分の行ったことのない(行ったことがあっても かまいません)国を舞台にした本を読みつつ過ごすというのはいかがでしょう。
(両角 幸治)

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