横浜弁護士会新聞

2009年9月号  −3− 目次

理事者室だより(15) やれば楽しさを実感!
副会長 二川 裕之
 私は、以前から、理事者経験者数人に「理事者は忙しいけど、楽しいよ〜」という話を聞かされていました。疑い深い私は、何を世迷言を!と思って、副会長就任前の3月初めに既に「理事者カウントダウンカレンダー」(ちなみに絵柄は深田恭子と相武紗季)を独自に作成し、「理事者終了まであと390日」なんてうそぶいていました。しかし、実際に数か月ほど理事者なるものを実体験してみますと、冒頭で述べた経験者の語った言葉は真実だ!と実感するに至りました。
 何が楽しいかって、担当委員会の活動の幅広さはもとより、弁護士会を代表しての各懇談会での挨拶や対外折衝、一弁護士では決して会えないような人達との面談・懇親、そして延々と続く毎週の理事者会でさえもがヤミツキに楽しくなってきます。さらに、特に今年度の理事者室は、5人の副会長はもとより会長さえもが発する大きな笑い声で常に充満しているので、楽しくないわけがありません(もちろん、真剣に議論もしていますが)。
 以上の次第で、忙しいのは事実ですが、私は、体を壊すこともなく、仕事上のストレスも消滅したばかりか(単に仕事が嫌いなだけ?)、かえって長年の持病である高血圧も正常値になってしまい、心置きなく平日でも午前2、3時まで飲み歩けるようになりました(私だけの「特段の事情」?)。
 私の書いていることが到底信じられないという方、将来、一員になってみたらきっと実感すると思いますよ!


新こちら記者クラブ 新しい弁護士
 先日、フランツ・カフカの短編『新しい弁護士』を読んだ。アレキサンドロス大王の軍馬だったブケファロスが、現代に弁護士として―何と馬のまま―甦るという奇想天外な内容である。非常に短いが、示唆に富んだ散文である。
 裁判員法が5月21日から施行された。裁判員制度の陰にやや隠れている感があるものの、改正検察審査会法も同日より施行されている。
 6月26日、同法に起因するニュースが全国を駆け巡った。二階俊博経済産業相(当時)側への西松建設献金問題で、元社長の国沢幹雄被告に対して東京地検が当初の起訴猶予処分を一転させ、起訴に踏み切ったのである。検察審査会の「起訴相当」との議決を受けた異例の判断であった。
 検察幹部は「民意を反映する検察審査会が求めるならば、起訴するということだ」と述べた。果たして、これは「新しい検察官」の端緒なのであろうか。
 9月29日には横浜で初の裁判員裁判が開かれる。裁判官は多様な価値観を持つ裁判員に刺激され、やがて「新しい裁判官」になる。そして新しい司法制度の下、「新しい弁護士」も誕生するのであろう。
 カフカは悲観的である。「方向を指し示すものは誰もいない。剣を帯びた者は多いが、ただ振り回すだけである。故に剣に従う者は、目を回すばかりである」と。
 しかし、私たちは過度に恐れる必要はあるまい。私たちの「新しい弁護士」は元より軍馬ではなかったのだから。願わくば、「古い弁護士」の時代が尊ばれんことを。
(時事通信社・遠藤 達也)


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