横浜弁護士会新聞

2009年5月号  −3− 目次

関弁連理事長退任挨拶 楽しい1年間を有難うございました
会員 池田 忠正
◇充実した1年
 4月3日の新年度第一回関弁連理事会で新理事長として井元義久氏(元二弁会長)を選出する務めを果し、3月末日、平成20年度関東弁護士会連合会(関弁連)理事長を退任しました。ひと言で申し上げると充実した楽しい1年間でした。理事長候補推薦人の方々、選出して下さった当会会員、推薦して下さった関東十県会の皆様に心からお礼を申し上げます。この1年間は5月からの「裁判員制度及び被疑者国選制度拡大への対応」及び「弁護士過疎・偏在問題解消への更なる一歩」にあけ暮れたというのが実感です。
 
◇裁判員制度等への対応
 関弁連は管内13弁護士会の連合体ですから、理事長の任務としては、各会の協調体制を構築、維持、発展させ、それを基盤に、各会の情報を相互に共有し、可能な限り足並み揃えて諸課題に対応できるよう、仲介役として後押しをすることが重要です。
 そこで、当会の木村日弁連副会長の協力を得て日弁連の担当副会長にも参加してもらい、関東十県のうち3弁護士会が延期決議を採択した中、5月及び9月に模擬裁判の13会実務者経験交流会を開催しました。
 他方、被疑者国選拡大で最も影響を受けがちな、各会支部の1年1回の定例交流会を、例年より3か月程度繰り上げ11月に開催し、それらの結果として、各会ともこれらの対応の準備に目途がついた旨の報告に接し安堵したところです。
 
◇関弁連定期大会等の成功
 関弁連の最大行事である9月の定期大会・シンポジウム・懇親会・前日の記念ゴルフ大会・前夜懇親会は、当会武井執行部をはじめとする関係者、事務局あげてのご協力により、いずれも成功裏に開催することができました。心から感謝申し上げます。
 大会宣言にもとづき、年度末までに偏在対策資金の増額を指示し、当会都市型公設事務所設立に伴う協力援助などの検討に着手したところです。当会担当で行なわれた地区別懇談会についても、法曹人口問題や国選弁護報酬などについて、日弁連会長などと当会会員との直接対話ができ有意義であったと思います。
 
◇理事長に日弁連理事の議席を
 東京三会と関東十県会との関係については、小生と東京三会の会長及び常務理事である関東十県の各会長との意思疎通が円滑に進み、そのお蔭で、東京三会と十県会との間の緊密化が相当程度に進んだものと実感しています。これを基盤として、懸案の「関弁連理事長に日弁連理事の議席を」という道が開ける期待が膨らんでいます。
 
◇心の勲章
 恒例の管内13弁護士会訪問や他の7つの弁連大会への前夜懇親会からの参加など数ある思い出の中で、一生忘れられないのは、10月23日、赤坂御苑での「秋の園遊会」に両陛下からお招きを受けたことです。歴代役員の方々の功労によるものですが、あの4時間のゆったりとした時間の流れが、妻と共に、心の勲章としていつまでも胸にざわめいています。本当に有難うございました。
 
◇俳句の寄贈
 赤津関弁連事務局長をはじめとする4人の事務局員は、額入りの次の俳句の寄贈を心やさしく受けてくれました。未熟な私のもとで役員を担った方々すべてを、5月への対応のための「耕人」と見立てたものです。
耕人の 稔りの明日を 信じけり


稲川会総裁等に対する組長訴訟 被害者弁護団に感謝状贈呈 ―10月23日民暴横浜大会開催にはずみ―
 横浜市鶴見区を縄張りとする稲川会初代大野一家高山組組員ら多数の暴力団構成員による縄張り荒らしに対する暴力的制裁行為に巻き込まれ死亡した男性の遺族の原告弁護団(団員30名・池田忠正団長)による指定暴力団稲川会総裁らに対する損害賠償請求訴訟が、平成20年12月16日、同総裁ら被告全員の責任を認める中間判決及び勝訴的和解によって無事解決した。
 本件は、神奈川県警察、財団法人神奈川県暴力追放推進センター及び当会による、民暴三者協定に基づいて結成された事案処理チームの弁護士により遂行されたもので、県民と共に歩んできた当会の長年にわたる民事介入暴力被害救済活動の大きな成果の一つである。また、本件中間判決によって、山口組、住吉会、そして稲川会と、指定暴力団主要3団体のトップに対して使用者責任を認める判決が出揃ったことには大きな意義がある。
 上記弁護団は、上記訴訟活動を通じて、暴力団被害者の救済その他の暴力団対策の推進に貢献をしたと評価され、平成20年12月25日には田端智明神奈川県警本部長から、平成21年3月19日には吉村博人警察庁長官から、それぞれ感謝状の贈呈を受けた。
 本年は、平成4年以来17年ぶり2度目の「民事介入暴力対策横浜大会」が10月23日(金)に開催される。大会実行委員会は昨年12月に立ち上がり、本件訴訟を踏まえ午前中の協議会のテーマは既に「組長訴訟」と決定しているので、今回頂戴した感謝状を励みとして、大会準備に向けて一層の努力をする所存である。
 民暴横浜大会を成功に導くため、会員のご協力とご参加をお願いする次第である。
(弁護団団長代行・大会実行委員会事務局長 菅 友晴)


新こちら記者クラブ 違和感と期待
 大学時代、「有名だ」というだけの理由で、かの憲法学者佐藤幸治氏のゼミに参加しました。落ちこぼれ学生だった僕は全く議論についていけず、劣等感ばかりが募る日々でしたが、今も記憶に残っている場面があります。
 当時、氏は司法制度改革審議会の会長。裁判員制度について学生の1人が「日本人の国民性に合わないのでは」と発言すると、氏は「国民性とは一体なんだ」と気色ばみました。「国民性なんてものは制度が変われば変わるんじゃないのか」。突然スイッチの入った様子にうろたえつつも、何とも言えない違和感が胸に残ったのを覚えています。
 あの時感じた違和感とは何だったのか。今振り返ると、百年に一度とも言われる司法の大改革が、そのような一刀両断の思考を支えに進められていいものか、という素朴な疑問だったように思います。もちろん、僕が審議会の議論の何を知っているわけでもありませんし、その発言ひとつで全体を勝手に解釈しているにすぎません。ただ、誰にでもは実現できなかったであろうドラスティックな改革の底流にあるものを垣間見たような気がしました。
 21日から裁判員制度が始まります。言うは易く、行うは難し。それでも試行錯誤を繰り返し、制度を運用していかなければならないのは実務に携わる法曹三者です。国民の統治機構への参加そのものは大いに歓迎すべきこと。いち記者として、この国に与える好影響に期待しています。
(共同通信社横浜支局瀬木 広哉)


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