横浜弁護士会新聞

2009年2月号  −3− 目次

支部サミット 市民が利用しやすい裁判所を
 昨年12月13日、ヴェルクよこすかにおいて、第6回首都圏弁護士会支部サミットが開催された。この支部サミットは、関弁連管内にある13の弁護士会支部が持ち回りで年1回開催しているもので、神奈川県内で開催されるのは、2003年(第1回)の川崎、2007年の相模原に次いで3回目となる。
 今回のテーマは「市民が利用しやすい裁判所を!」。例年は、支部の裁判官の数が少ないことや、扱う事件の種類が制限されていることなどをテーマとしてきたが、今回は、横須賀支部の裁判所庁舎が市街中心部(横須賀市役所近くの新港地区)に移転する計画のあることを踏まえ、裁判所の施設面に焦点を当てた企画とした。
 パワーポイントによる参加各支部の紹介、川崎支部会員の熱演(怪演?)による家事調停を題材とした寸劇のあと、パネルディスカッションが行われ、横須賀市企画調整部長の廣川聡美氏、くらしの相談センターを主宰し無償で市民の相談に乗っている福光洋一氏(平成13年度横浜弁護士会人権賞受賞者)、横須賀支部で長年活動し家事調停委員も務めている川瀬冨士子会員の3名がパネラーとなり、現状の問題点やこれからの裁判所のあり方について、活発な意見交換がなされた。支部では法廷や調停室の数が足りない、待合室が狭い、プライバシーが配慮されていない、公衆電話が撤去されてしまったなどの問題が指摘されるとともに、福光氏からは「市民は裁判所に入るだけでひどく緊張する。裁判官や裁判所の職員は、その気持ちを理解して利用者に接してほしい」などの意見も出され、「敷居が高い」と言われることの多い弁護士としても、我が身を振り返る必要性を痛感した次第であった。
 なお当日は、事前の控えめな推測をよそに、松沢成文神奈川県知事、蒲谷亮一横須賀市長、平井竜一逗子市長をはじめ多数の来賓の方、市民の方、各地の弁護士など約160名が会場に詰めかけ、途中で椅子を増設しなければならないほどの盛況となった。実行委員会のメンバーに加わるなど全面的なご協力をいただいた、川崎・県西・相模原の各支部に、あらためて感謝したい。
(横浜弁護士会横須賀 支部長 佐藤 進一)

協同組合年末バザー 常連さんいらっしゃい
 年末の恒例行事としてすっかり定着した感のある神奈川県弁護士協同組合主催のバザーが、昨年12月18日に、当会会館5階大会議室で開催された。
 このバザーは、会員から提供してもらった品物を販売して、得られた収益を弁護士会及び協同組合の事業に役立てようと始められたものである。これまでの収益は、弁護士会のパソコンや椅子、テーブル等の購入に充てられてきた。品物は時価の約半分以下の価格で販売している。
 今年も開場前から長蛇の列ができ、毎年常連のお客様もいて、中には大きなバッグやカート、台車を持参してきた方もいらした。
 品物はわずか30分程で完売となり、大盛況のうちにバザーは終了した。
 ご協力くださいました会員の皆様ありがとうございました。
(バザー実行委員 岩田 恭子)

新こちら記者クラブ 心に残る弁護士の言葉
 昨年2月に司法担当に赴任して、早くも1年が過ぎた。あらためて取材ノートをめくると、色々な事件が脳裏によみがえる。イージス艦情報漏えい事件に米兵のタクシー運転手強盗殺人事件、横浜事件の再審開始決定。大事件の裁判が紙面を飾る一方、記事にならない裁判も多い。傷害や窃盗、器物損壊事件など。社会性の有無からボツになった原稿の中に、今でも忘れられない裁判がある。
 昨年5月に行われた放火未遂の公判。勤務先を解雇されたことなどから家族と口論になり、自宅廊下に火をつけた被告男性は逮捕後に離婚した上、医師からは病気で余命1年と宣告されていた。
 懲役2年6月、執行猶予3年の判決を受けながらも、病院に入院を断られ、身を寄せる親族もなく途方に暮れる男性。閉廷後、弁護士に今後どうするのか尋ねると「このままほうり出すわけにもいかない。レンタカーで簡易宿泊所に連れて行き、何か食べ物を差し入れますよ」との答えが返ってきたのに、驚きと感動を覚えた。
 検事にこの話をすると「そんなのだめだよ。踏み込みすぎだよ」と一笑に付された。確かにその通りだろう。弁護士としての行為を逸脱した特殊なケースなのかもしれないが、それでも、あの時の弁護士の言葉は今でも私の心に残っている。
 法廷内での出来事にとどまらず、法廷外でのさまざまなエピソードも読者に届けられればと思っている。
(神奈川新聞 石尾 正大)

理事者室だより10 理事者室の風景
副会長 小賀坂 徹
 4月1日、理事者に就任したその日、裁判所や各役所などにあいさつ回りに出かける。そこで地家裁所長室、検事正室などに案内され、ひとときの懇談をもつのだが、滅多に入ることのないそれらの部屋の圧倒的立派さに随分驚かされた。地裁所長室、検事正室の大きな窓から港を見下ろす様はまさに絶景だったし、何より広い。どこにも整頓された大きな机とそびえるような背もたれの椅子があり、その正面に立派な応接セットが置かれていて、ちょっとしたホームパーティーならすぐできそうだ。
 それにひきかえ当会の理事者室は弁護士会館の2階の隅っこにあって、窓から見えるのは裁判所の駐車場だけである。そこに会長、副会長6名分の机がひしめき合って置かれていて、部屋のスペースはほとんどそれでいっぱいである。裁判所などと比べて見劣りすることこの上ない。
 でもそれが弁護士会らしいとも思う。会長も副会長も他の会員も、また事務局職員も自由に出入りして、一見雑然とした中で議論が交わされ物事が決められていく。その方が心地よい。だから権威の象徴のような施設は不要なのだ。
 その理事者室で春夏秋冬の順番どおりに季節を過ごし、もうじき2度目の春が訪れようとしている。思いもかけず、また柄にもなく「愛着」が芽生え始めている。
 人間関係はなおさらである。

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