横浜弁護士会新聞

2009年2月号  −1− 目次

弁護士フェスタ in KANAGAWA 2008 裁判員劇「あなた、本当にやったの?−格差婚の悲劇−」裁判官・検察官も熱演
 昨年12月21日、横浜市開港記念会館と当会会館において毎年恒例の弁護士フェスタが開催され、約480人の参加者でにぎわった。
 5月21日からの裁判員制度開始をひかえ、訪れる市民の関心も高いようであった。マスコットのサイサイ君も姿を見せ、盛り上げに一役買っていた。
 
 弁護士フェスタのメイン企画として、ここ数年、裁判員制度を取り上げ、裁判や評議を戯曲化しているが、観劇した市民には好評を博している。
 いよいよ本年は裁判員制度施行年であり、フェスタにおいて裁判員裁判を事前に疑似体験してもらう最後の機会となった。
 
現職法曹三者それぞれの立場から
 そこで今回の企画では、基本的なコンセプトを、(1)市民に裁判員制度の運用をわかりやすく解説し十分に理解してもらうこと(2)法曹三者がそれぞれの立場から説明すること、に置いた。
 そのために、現職の横倉雄一郎裁判官と木村美穂検察官・徳竹敬一検察官をゲストに迎え、劇中の裁判官・検察官の役を演じてもらい、引き続き座談会にも参加してもらった。また、例年どおり神奈川大学法科大学院にも協力を仰ぎ、卒業生の新倉武さんに出演してもらった。
 これらゲストの皆様の活躍は著しく、また劇団蒼生樹の濱田重行氏の演出により、出演した当会会員の好演も含め、劇は大成功に終わった。
 
事件のあらすじ
 格差婚で妻に頭の上がらない電気設備工の被告人が、深夜、近くの電気店倉庫に侵入した。これを発見した警備員が被告人を捕まえようとしたところ、被告人は警備員を殴打のうえ突き飛ばし、傷害を負わせてしまったというものである。
 
検察側・弁護側の主張
 検察側は、倉庫の裏口のガラスがスパナで壊されていることや商品を梱包した段ボール箱が崩されていること、あるいは妻の「ビデオカメラが欲しい」というおねだり(この妻役を当会職員の柴田さんが熱演!)があったことなどから、被告人の窃盗の意思を認め、事後強盗致傷罪を主張した。
 窃盗の実行に着手し、逮捕を免れようとして、相手の反抗を抑圧するに足りる暴行を加えると事後強盗罪となる。今回、被告人に窃盗の意思が認められればこれにあたり、さらに被害者に傷害を負わせているので事後強盗致傷となるのである。
 検察側の主張に対し、弁護側は、被告人は贅沢三昧の妻に嫌気がさして家を飛び出した後、突然の雨と寒さをしのぐため倉庫に侵入したに過ぎない、などとして窃盗の意思を否定し、傷害罪を主張した。
 以上のとおり、争点は窃盗の意思の有無であった。
 
評決結果
 結審後の評議は、会場の参加者へのアンケートを集計する形をとった。
 回答者133名のうち、窃盗の意思を認める人が48名、窃盗の意思を認めない人が85名であり、執行猶予か実刑かについては、執行猶予120名に対し、実刑13名であった。
 証拠が多くはないので困難な判断だったと思われるが、やはり、あの真面目そうな被告人がやるはずがないといった勘や印象に頼る傾向がアンケートの意見欄から見受けられた。今後の裁判員制度の運用に大変参考になる企画となったと思う。
(会員 高岡 俊之)

第13回横浜弁護士会人権賞 「特定非営利活動法人 さなぎ達」「神奈川県消費生活相談員ネットワーク」が受賞
 「特定非営利活動法人 さなぎ達」は、昭和58年に起きた少年らによるホームレス暴行死事件を機に発足した「路上生活者の実態を知る会」のメンバーにより平成13年に設立され、横浜の寿地区で、路上生活者及び路上生活に至るおそれのある人達の自立支援を目的として活動している。住民の憩いの場である「さなぎの家」や、NHK総合テレビ「ドキュメント・日本の現場」でも紹介された「さなぎの食堂」の運営に加え、「ポーラのクリニック」において医療による支援も行っている。
 「神奈川県消費生活相談員ネットワーク」は、県内の消費生活専門相談員により組織された任意加入団体である。県民の消費生活向上を目的に、調査研究、情報の収集・提供等を行うとともに、相談員のスキルアップのための活動を行っている。
 贈呈式で受賞挨拶に立った「さなぎ達」の理事長である山中修医師(写真右)は、「さなぎ達の活動における根本理念は一人ひとりの人間を大切にすることにある。そのために、衣食住の充足だけでなく就労及び医療面からのバックアップを含めた5本柱を基本に活動している。」と語った。
 また「消費生活相談員ネットワーク」の代表者である永久純子氏(写真左)は、「今まで消費者被害の未然防止を目的に活動してきた。今回、消費者問題が人権問題ととらえられこの賞をいただいたことは、とてもうれしい。これからも消費者被害防止のために広く活動していきたい」と語った。
 
横浜弁護士会人権賞
 米軍ファントム機墜落事故の訴訟弁護団からの寄付金を基に設立された人権救済基金を利用して、人権擁護の分野で優れた活動をした神奈川県内の個人、団体を表彰し、人権擁護の輪を広げ定着する目的で、平成8年3月に創設された。

山ゆり
 米国のいわゆるサブプライムローンに端を発した世界同時株安。主要46か国・地域の株価指数は08年の1年間に全体で44パーセント下落。日経平均も42パーセント下落し、中国やインドなどの新興国では、株価が半値以下となった
日本の基幹産業である自動車業界。08年の国内新車販売台数(軽自動車を除く)は約321万台。5年連続の減少で、34年ぶりの低水準。ピークだった90年のほぼ半分である
神奈川県内に目を転じても、08年に倒産した企業の負債総額は約3373億円で、前年の約2倍増とのこと
右肩下がりの世界の中で急増を続けているのがタクシー台数と弁護士数。タクシー台数は02年の規制緩和を機に急増し、以来法人タクシーの増車台数は数倍になった例もあるという。一方、08年の司法試験合格者数は新旧制度を合わせて2206名。合格者712名だった平成5年と比較すると、15年の間に3倍以上となったことになる 雪
02年の規制緩和以来、タクシー運転手の待遇は悪化し、年収が200万円余りということも珍しくないという。司法試験合格者の就職難が取りざたされる昨今。果たして弁護士業界はいかに。
(三谷 淳)

前のページへ 次のページへ

<<横浜弁護士会新聞メニューへ