横浜弁護士会新聞

2009年1月号  −2− 目次

盛大な歓迎と活発な質疑応答 第3回水原地方弁護士会訪問
 当会と韓国水原地方弁護士会との間では、平成15年12月の友好協定締結に始まり、以後、年に1度の相互訪問を続けている。今回は、平成16年、18年に続き、当会が韓国・水原を訪問する3度目の機会となった。
 11月14日、当会の水原訪問団は、まず水原地方弁護士会の会館を訪れ、盛大な歓迎を受けた。続いて、水原地方法院(裁判所)、水原地方検察庁の表敬訪問を行った。
 韓国では、昨年から国民参加裁判制度が開始されたこともあり、裁判所でも検察庁でも、同制度の実施状況や感想等で話は尽きなかった。また、検察庁では、接見室の見学も行ったが、被疑者・被告人と弁護人との仕切りはなく、机には弁護人が使用できるPCも設置されており、日本との環境の違いを大いに感じた(余談であるが、弁護人用の椅子も非常に立派であった)。
 その後、裁判所の会議室にて、メイン行事であるセミナーを行った。
 これまでのセミナーは、司法改革に関係したテーマで開催していたが、今回は、趣向を変えて相続法をテーマとした。まず、初めに北島美樹会員から日本の相続法について報告を行い、続いて水原地方弁護士会の弁護士から韓国相続法の変遷についての報告(韓国では近時相続法の大改正が行われた)、水原地方法院の裁判官から相続法の最近の重要判例の動向についての報告が行われた。
 その後、双方からの質疑応答の時間となったが、今回のテーマは実務的にも役立つものであり(特に、当会の会員にとって韓国法が準拠法となる相続事件は数多いであろう)、質疑応答は、以前にもまして活発なものとなった。
 セミナーの後は、ホテルへ移動して、恒例のパーティーが開催された。前回の水原でのパーティでは、かなり激しい?飲みが開催されたが、さすがに我々の訪問も3回目ということもあってか、今回は比較的落ち着いたパーティーであった。それでも、最後は、会場でのカラオケ合戦が展開され、両弁護士会の友情はさらに深まったのではないかと思う。
 次回の交流会は、横浜において開催される予定である。国際交流委員会では、水原地方弁護士会との交流会が、我々の実務にも役に立つようなものとなるべく企画を考えているので、次回の交流会では多くの会員の参加を期待している。
(会員 黒木 勉)

弁護人の複数体制は必須! 模擬裁判員裁判経験者交流会
 昨年8月6日に、3庁で実施されている裁判員裁判の模擬裁判(以下「模擬裁判員裁判」という)の弁護人役を経験した会員約15名が集まり経験交流会が開かれた。
 これまで、模擬裁判員裁判は年に数回実施されていたが、裁判員裁判の実施を間近に控え、昨年は6月18日・19日を皮切りにほぼ毎週が実施されるようになり、多くの会員に弁護人役を経験してもらった。交流会では、和やかな雰囲気の中にも、裁判員裁判の問題点や弁護人の取り組み方などについて厳しい意見や本音が飛び出した。
 これまでの刑事裁判と裁判員裁判と大きく異なる点として、裁判員裁判は必ず公判前整理手続に付され、弁護人は冒頭陳述を義務づけられる。公判前整理手続では、単に争点と証拠の整理にとどまらず、裁判をいかに裁判員にわかりやすく行うか、冒頭陳述や弁論での「文言」「文書提出方法」などの摺り合わせも試みられた。書面配布の是非、配布する場合にはそのタイミング、パワーポイントや書画カメラ使用の是非といった点について各参加者から様々な意見が出された。
 裁判員役の中には書面があるとわかりやすいという声もあったが、これに対しては、弁護人役からは、書面の用意やパワーポイントの作成等に要する弁護人の事務処理量が多大であるといったり、弁護人や検察官が異議を出すことができない状況下で安易に書面提出を認めていいのかといったりという疑問の声も上がった。
 また書証の取調べに関しては、供述調書の全文朗読は裁判員にとって苦痛であり出来る限り人証で立証をさせるべきであるといったり、人証も長時間の取調は裁判員の集中を妨げることから簡略かつ当を得た質問が求められているといった意見が多数を占めた。
 裁判員裁判では弁護人に短期間に膨大な量の事務処理が要求されることから、国選事件であっても弁護人の複数体制は必須であるとの意見が圧倒的であった。弁護人の複数体制を取ることにより、短期間で行われる証人尋問及び被告人質問において、主尋問・反対尋問の客観的分析が可能となり、より充実した弁護活動が期待できる。
 5月に施行される裁判員裁判に向け、裁判員にとってのわかりやすさに配慮して弁護人各自が弁護技術を研鑽する必要性がある一方で、拙速裁判とならぬように被告人の権利を慎重に守る必要があるという視点が一層浮き彫りになった意見交流会であった。
(会員 野口 容子)

高い出席率のもと充実の事例研究 倫理研修会
 昨年11月5日・6日、当会会館において平成20年度倫理研修会が行われた。
 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命としており、その使命にふさわしい倫理を自覚する必要がある(旧弁護士倫理参照)。またその使命達成のために弁護士自治が保障されているが、この自治を維持するためには弁護士が市民から信頼される存在でなければならない。このような観点から当会においては平成元年より倫理研修会を開催し、さらに日弁連に先駆け、平成10年度から新規登録及び登録後5年毎の倫理研修会参加を義務づけた。
 倫理研修会の内容は、綱紀懲戒担当副会長による講義、研修委員会委員による過去の懲戒事例の報告、事例研究方式によるディスカッションとなっている。懲戒事例の報告ではパワーポイントを使用し、事例研究では会場の全員が参加できるよう司会進行し、研修会が充実したものとなるよう工夫をしている。
 出席状況は、平成19年度の91・25%に続き、平成20年度も89・72%と高い出席率となっている。会員の研修への参加が義務付けられたこともあるが、このような高い出席率は各会員が倫理研修の重要性を認識していることの現われといえる。
 平成17年度には弁護士職務基本規程が制定された。倫理規範と行動規範とより具体的に規定された。また昨年からは75歳年齢制の撤廃、日弁連による代替研修が新設された。
 弁護士を取り巻く昨今の情勢に鑑み、弁護士自治の維持のため市民から一層の信頼を得るための行動、努力が期待されている。
 (会員 服部 政克)

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