横浜弁護士会新聞

2008年11月号  −1− 目次

市民の身近にあって利用しやすい司法を目指して 平成20年度関東弁護士連合会定期大会
司法基盤の整備と弁護士過疎・偏在の解消を
 平成20年度シンポジウム委員会が、膨大な資料の精査、多面的な調査・分析を行って作り上げた資料は500頁超にも及ぶ大作である。これらの資料・データをもとに、当会浦田修志会員より行われた基調報告では、日弁連等による取組みの成果で管内の弁護士偏在は徐々に解消傾向にあるものの過疎地域は依然存在していること、支部における裁判官・検察官の不足は顕著であり市民にとって利用しやすい司法の基盤が整っているとは言い難い状況が浮き彫りにされた。他方、法科大学院生を対象に行ったアンケートによれば「弁護士が少ない地域で活動したいと思う」と答えた院生が37%に達したとのことである。今後の司法を担う法科大学院生の意欲や能力を存分に生かすことのできる制度の確立や支援の充実が望まれる。
 引き続き放映された「ひまわり見学バスツアー」の映像では、銚子、鹿嶋、神栖各ひまわり基金法律事務所の様子が分かりやすく紹介された。会場では、その中の1つである鹿嶋ひまわり基金法律事務所の元所長である谷靖之弁護士(現在は当地で「かしま法律事務所」を開業)から、過疎地域における弁護士活動の重要性、水戸地裁麻生支部の司法インフラの実情が、現実の事務所経営を踏まえて報告された。
 
講演「この10年日本はどう変わったか」─格差社会の現状と背景─
 後藤道夫都留文科大学教授の講演では、日本型雇用や各種セーフティネットの解体・縮小により急増した貧困層や非正規労働者達は、不満を声に出さずに飲み込んでしまう、弁護士過疎解消に加え個々の弁護士の「能動的法活動」が要求されるとの提言がなされた。
 
パネルディスカッション
 シンポジウムのメインを飾ったのは片山善博氏(慶應義塾大学法学部教授、元鳥取県知事)、水谷賢弁護士(岡山パブリック法律事務所所長)、当会の石川裕一会員(安芸ひまわり基金法律事務所元所長)によるパネルディスカッションである。
 元知事の片山氏からは、行政の透明性を担保するのは「最終的には司法により裁かれても構わない」という姿勢であること、消費生活相談などのように潜在化した被害を汲み取りその先の司法的解決につなぐことは重要な行政サービスの一貫であり、そのための司法基盤の整備や弁護士と行政の連携の必要性が語られた。
 また、石川会員は過疎地における弁護士活動の必要性を実体験に基づいて報告し、水谷弁護士から示された都市型公設事務所の将来像は今後の弁護士のあり方を考えるうえで大変参考になるものであった。
 なお、本シンポジウムでは、横浜地裁速記官有志により発言を同時速記し、ステージ脇の大画面に写し出すという試みがなされた。裁判員裁判の開始を迎えるにあたり、出席者が速記の役割を実感する貴重な機会でもあった。

全会一致で大会宣言・大会決議を採択
 引き続き午後2時から平成20年度関東弁護士連合会定期大会が行われ、定期大会宣言1つと定期大会決議2つが、いずれも全会一致で採択された。
 
都市型公設事務所の設置推進へ―大会宣言
 定期大会では、市民の司法・弁護士・弁護士会に対する期待に応えるために、今なお、少なからず存在する弁護士が不足している地域を解消すべく、次の施策を実施することが宣言された。
 (1)都市型公設事務所を管内の各弁護士会に設置する方向で検討を進める(2)弁護士過疎・偏在地域への定着を促進するため新規登録弁護士、司法修習生に対し、各都県を越えた対応に努める(3)法科大学院との連携、エクスターンシップの充実等に努める(4)都市型公設事務所への経済的支援を目的とした基金の整備・拡充(5)国に対して、全裁判所支部・全検察庁支部に裁判官・正検事を常駐させる、家庭裁判所の出張所を簡易裁判所に増設する等の諸施策の実現と国選弁護報酬の増額、民事法律扶助予算の拡大など必要な経済的措置を求める。
 当会においても、今後、大会宣言の実現に向けた具体的対応が求められることとなる。
 
今後の取組課題に向けて ―大会決議
 また、一つ目の大会決議として、子どもとインターネットの関わりに関する決議がなされた。近年、インターネットの普及により、インターネット上の有害情報に子ども達がアクセスし、事件やトラブルになる事案が急増している。そこで、子ども達とインターネットの関わりについて現状を研究し、子ども達の基本的人権を尊重しつつ、インターネットの有害な側面を克服し、子どもとインターネットの関わりの適正にするための提言を関東弁護士連合会が行うことが決議された。
 二つ目の大会決議として、「暴力団の資金源対策及び犯罪収益剥奪法制の更なる充実を求める決議」がなされた。犯罪収益の剥奪及び暴力団被害の回復に努めることの重要性を認識し、国及び地方公共団体に対しては、関係省庁による暴力団の資金源対策の推進によって暴力団の資金獲得活動を風圧することと、警察、検察及び国税が組織的に連携して、暴力団が獲得した資金をはく奪するための手段を講じること、そして、これらの施策を実現するための法整備を求めていくことが決議された。
 
懇親会
 定期大会後、日本弁護士連合会会長による乾杯の発声に始まった懇親会では、アトラクションとして用意された揚琴、琵琶、二胡による中国音楽の生演奏が花を添えた。多忙な中、松沢成文神奈川県知事も駆け付け、会場を埋めつくさんばかりの多数の会員が相互に親睦を深め合い、大変盛況の中、本年度の関東弁護士連合会定期大会は終了した。
 次回大会は平成21年9月25日、長野県にて行われる。北川和彦長野県弁護士会会長からは、新潟に負けない日本酒と山梨に負けないワインを是非飲み比べに来てほしいとの呼びかけがなされた。

山ゆり
 「人はオラン、魚はイカン、米はナシ」とは失礼な。「昨日のクマリンったら、ほぼキラキラでにこにこだっタワ」くらいにしておいてほしい。インドネシア語の話である
 初めてバリに行った時、とても驚いた。鮮やかな空の青、濃い緑の植生、くっきりとした日差しと影、花や祭りの赤や金色…これは夢の中と全く同じ極彩色ではないか。夢と現実の間でそれまで感じていた色彩のギャップが一気に解消した
 そんなこんなでもう一目惚れである。バリに夢中になり、インドネシア語に夢中になった
 インドネシア語は可愛らしい。クプクプ(kupu−kupu 蝶)、ハティハティ(hati−hati 気をつけて)など可愛さ目白押しである。でも便利なのはティダッマウ(tidak mau ノーサンキュー)という撃退の言葉だ
 残念なのは職業。検事はジャクサ(jaksa)、判事はハキム(hakim)と勇ましいが、弁護士だけはプンガチャラ(pengacara)である。「プンガ」だけでもサザエさんが喉に何か詰まらせたみたいなのに、軽薄そうな「チャラ」がついて情けなさに追い打ちをかける 紅葉
ともあれ、世界一簡単だと評判のインドネシア語。マレーシアでも通じて大変お得である。
(大関 亮子)

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