横浜弁護士会新聞

2008年2月号  −2− 目次


生態系と命についての真摯な自覚を 外来生物問題市民フォーラム
 アライグマやタイワンリスを見かけて、自然が残っていると喜んだ経験がないだろうか。  
 実はそれらは本来そこにいるべきではない。それも従来の生態系に悪影響を及ぼす侵略的な存在なのである。そのような外来生物が各地に蔓延してしまっている。
 三浦半島ではアライグマによる農業被害・生活被害が年々増加し、希少生物減少にも影響を及ぼしている。アライグマの生息地域はは横浜・川崎や湘南・厚木方面にも拡大しており、県内の生息数は少なくとも4000頭以上と推定されている。
 平成17年6月に施行された外来生物法に基づき、神奈川県はアライグマ防除実施計画を作成し、市町村とともに計画的防除に取り組み始めているが、まだ前途は明るいとは言えない。
 当会公害・環境問題委員会は、市民の意識喚起の一助にと、「外来生物対策の現状と展望〜三浦半島のアライグマを例として〜」と題する市民フォーラムを企画し、昨年10月26日、横浜市の吉野町市民プラザにて開催した。
 外来生物問題の第一人者である羽山伸一准教授(日本獣医生命科学大学)は、実践に基づいた最新の研究成果を映像とともに語った。また県及び横須賀市の担当者もパネリストとなり、被害対策の現状や予算・調査などにおける種々の困難を率直に報告した。会場には学生、獣医師、国・自治体やNGOの関係者などが多数訪れ、熱心に耳を傾けていた。
 外来生物がかけがえのない生態系を破壊するという現実を我々はしっかり認識しなければならないが、もともとの原因は人間の飼育放棄等の行動にあることも銘記しておくべきである。生き物の命に対する責任ある真摯な姿勢がなければ、何も解決しない。本フォーラムではそのような共通認識を持つことができたと言えよう。   
(公害・環境問題委員会 副委員長 畑中 隆爾)

支部にも司法基盤の整備を 首都圏支部サミットで宣言採択
 昨年12月8日、第5回首都圏弁護士会支部サミットが相模原市のけやき会館にて開催された。    
 このサミットは本部の会員にとっては馴染みが薄いかもしれないが、首都圏の裁判所・検察庁の支部が、管内人口や事件数に比して脆弱な司法基盤しか有しておらず、本庁管内住民と比べて司法制度に「地域格差」が生じているという支部の現状を訴え、改善を求めることを目的としている。平成15年に当会川崎支部において初めて開催され、以降、毎年首都圏の支部が持ち回りで開催している。    
 当日は、支部紹介に続き、支部の現状と今後の課題についての相模原支部会員による寸劇及びパネルディスカッションが行われ、最後に宣言が採択されて閉幕した。      
 支部サミットは法曹関係者のみを対象とした内向きのイベントとしてではなく「市民のための司法」実現のため一般市民を対象として広く参加を呼びかけた成果か、予想以上に市民の参加が多く、全出席者180名のうち45%近くを占めるという開催側としては非常に喜ばしい結果となった。今後もこうした活動を通じ、支部が抱える問題についての理解を深め、司法の地域格差を解消するきっかけとなればと願っている。  
(会員 鈴木 芳美)

宣言の骨子
 ◇首都圏各支部に共通する要求
  1 裁判官・検察官の増員
  2 庁舎の増改築、アクセスの良い場所への移転
  3 希望に応じ裁判員制度導入
  4 労働審判事件の取扱
  5 少年鑑別所の設置
 ◇当会各支部関連の要求
  1 庁舎の移転新設(横須賀)
  2 合議事件取扱(相模原)
  3 管内北部に簡裁・家裁設置 (川崎)
  4 拘置支所の設置、拡充 (川崎・県西)
  5 法テラス支部設置 (横須賀・相模原)

上海市人民検察院来る!裁判員制度について意見交換も
 昨年11月19日に上海市人民検察院訪日団一行7名が当会を訪問した。上海市の検察官の来訪は平成16年に次いで2度目であるが、今回は、一昨年に当会の国際交流委員会を中心とする上海・杭州視察団が上海市人民検察院を訪問したことを踏まえて実現したものである。    
 当日は、当会で一行を出迎えた後、横浜地裁、横浜地検への表敬訪問、横浜地裁裁判員裁判用101号法廷の見学、同法廷での刑事部裁判官による裁判員裁判の説明なども行われた。また、その後の当会大会議室での意見交換会では清水規廣会員が我が国の司法制度改革などを解説し、上海市人民検察官からは裁判員裁判に相当するものとして中国で既に実施されている人民陪審制度が報告された。日本の裁判員制度について鋭い質問も出され、実のある交流を行うことができた。なお、中国の人民陪審制度は1954年憲法に規定されており歴史は古く、刑事事件だけでなく民事、行政事件も扱うことになっているが、運用上の問題も含んでいるとのことである。    
 また、夜にはメルパルク横浜で当会の山本一行会長以下40名の会員が出席して歓迎懇親会が開催され、横浜国大留学生の協力による通訳もあって大いに盛り上がりを見せた。
 現在当会は上海市律師協会との友好協定締結を目指して活動中であるが、今回の訪日団との交流は今後の当会の国際交流活動に新たな弾みを与えるものであり、こうした活動を通じて、会員が中国との渉外業務の情報と機会を得ることも期待されるところである。
(国際交流委員会 副委員長 橋本 吉行)

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