今回は、法テラス神奈川地方事務所の初代所長を務められ、先日退任された山下光会員に、初代所長としてのご苦労や所長時代に感じたこと等をお聞きしました。 |
■法テラス初代所長ということで、就任される前にご不安はなかったのでしょうか |
弁護士業務と平行して所長職もこなすことになるわけですが、法テラス所長職にどれくらい時間を費やさなければならなくなるか、当初は全く読めませんでした。また横浜の場合、司法改革反対論というものも根強くありますから、スムーズに立ち上がるかどうかは当初、非常に心配しました。しかし弁護士会に対する最後の御奉公と覚悟を決めたという感じです。 |
■不安を抱えながらのスタートであったようですが、スタート時のご苦労は |
最初はとにかく、法テラスの知名度を上げ、その存在を理解してもらうということに苦労しました。当初は関係各方面の挨拶回りに忙殺されましたね。法テラス開設にはいろいろな意見もありましたが、弁護士会の執行部、各委員会、地方公共団体等も非常に協力してくれました。また、法テラスに転職を希望する弁護士会職員が多数いましたが、弁護士会の運営を考えると、半分に減らさざるをえなかったこと、川崎・小田原の支部、相模原・横須賀に審査拠点を設置することに苦労しました。 |
■法テラスで活動された間の率直なご感想はどのようなものですか |
一言で言うと、とても楽しかった。開設当初法テラスは、お金も、六法も、私のゴミ箱もないという状態でしたし、職員も残業ばかりで大変でした。私としてはもっと各地方事務所に広い裁量権があると思っていたがそうでもなかったり、法務省の指針がよく変わり意外に思ったことや、お金には全くノータッチで、どれだけ費用を支出できるかわからず、苦労も多かったのですが、皆で協力し新しいものを創るという、高揚した気持が強く、よく皆さんと酒を飲みました。 |
■所長時代に目標にされていたことはありますか |
まず、代理援助事件数を増やすこと、それから審査のスピードを上げることを第一目標に据えました。それまでは審査ひとつとっても遅かったので、他事務所のよいところを吸収しようと、合理化に努めている法テラスへ率先して視察に行ったりしました。 |
■実際支援事件数はどうなりましたか |
私の手元の数字によれば、現時点で、昨年の同時期に比較して相談件数は約2倍になり、代理援助件数も約1・4倍以上の伸びを見せています。審査期間は半分に短縮されました。 |
(聞き手 二川 裕之 北島 美樹) |
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2007年3月の常議員会に、当時理事者の私達は、神奈川の司法10の決意(案)の承認を求めて議案を提出した。質疑の結果、反対あるいは慎重な意見が多いとみて、議案としては撤回をしたという経緯がある。これを今期理事者は、さらに意見を募ってリニューアル版を作り、会員集会で広く議論をした上で、年末に臨時総会を開いて決議したいと考えている。応援の意見を述べたい。
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まず、3月常議員会での反対・慎重意見の概略はつぎのとおりである。(1)「決意」はマニュフェストとして責任を伴うものであり、予算の裏付を必要とするものも含まれている。単年度で理事者が交代する組織には不適切である。(2)出すとしても、多様な考えをまとめるプロセスが十分ではない。(3)会の決意として出す以上、総会事項とすべきである。
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いずれも傾聴に値する意見ではある。しかし、近時の司法改革の大きな流れを想起して欲しい。 |
2001年6月に「司法制度改革審議会意見書−21世紀の日本を支える司法制度」が同審議会から発表された。これに先立ち司法改革決議をしていた日弁連はもとより、当会としても司法改革の実現に向けた具体的な取り組みを迫られたのは当然である。 |
この中で、2002年1月11日に常議員会において「神奈川の司法10の提案」が承認され、同年2月19日には臨時総会において「市民の司法の実現に向けて横浜弁護士会をあげて取り組む決議」が採択された。こうして我々は、ロースクール及び法テラスの設置・運営をはじめとする司法改革の諸課題に一丸となって取り組んできたのである。 |
上記決議の採択から5年が経過した。その間の司法改革の推移を見て、市民のための司法の実現に向けて、我々が何をすべきかを整理し、これを内外に表明しようとするのが今回の決意(案)に外ならない。今こそ、会員の団結と意識の高さを示す絶好の機会と言えるだろう。 |
私は、会長として、県知事はじめ県内主要市の市長と面談し、また、ゲートキーパー法案等に関して県内選出の国会議員諸氏と面談する機会を得た。その際痛感したのは、弁護士会とは何か、何をやろうとしているのかを理解してもらうことの困難さである。単なる業界団体とか法律相談業務の元締めであるかの如き認識を改めてもらうのに時間が必要である。まして一般市民においてはなおさらである。 |
今回の決意(案)は、これを端的に理解してもらうのに最適である。むろん、これは固定的なバイブルではなく、当会の目指すべき指標であり、道しるべである。時間の流れ、状況の変化に応じて、必要があれば修正すればよい。100%完全なものなど考えなくてもよい。市民のための司法の実現を目指す、その一点で当面の決意を表明すべきである。
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2006年度会長 木村 良二 |