「弁護士が毎日来るので困った。もう来ないでくれと言ったこともあります」。 |
昨年起きた殺人事件の裁判での一幕。殺人罪などに問われた被告人は丁寧な口調でそう答えた。裁判の前には「弁護士は必要ありません」とも言っていたという。 |
2カ月近く続いた警察の取り調べについて、「誘導尋問と強制ばかり」と不満を述べた被告人。だが長時間の取り調べの後に待っていたのは、弁護士による「取り調べ」だった。それは精神的にも体力的にもきつかったらしい。 |
「何を聞かれた」「何を話した」。五人近い弁護士が毎日のように接見に来る。 |
当時のことについて、被告人は「とてもじゃないけど思い出せない」と法廷でうんざりしたように振り返った。 |
弁護士は被告人の権利を守るために、不当な調べに対し「言いたくない事は話さなくていい」「納得できなければ調書にサインしなくていい」と助言をする。それは当然のことだと思う。 |
だが被告人が警察と弁護士の「取り調べ」に疲れ切ってしまえば、真実を話す気力をなくしてしまうのではないか、とも危惧する。極度の緊張状態が、人を狂わすことだってあるかもしれない。 |
ちなみにこの被告人、検察側の調べについてはこう述べていた。「質問と答えとしてどれが一番近いか選択肢を示してくれた。座っているだけでいいんで、地検の調べが一番気が休まりました」。 |
(東京新聞 小川 慎一) |