横浜弁護士会新聞

2007年12月号  −3− 目次

法科大学院からの報告(4) 手作り教材でリーガルマインドを育成する 桐蔭横浜大学編
 桐蔭横浜大学法科大学院の特徴は、これからの弁護士像を「ハイブリッド法曹」と位置づけて、社会で活躍してきた人や法律以外の分野を専攻してきた人などに門戸を広げているところにある。  
 そのため、企業法務などで働きながら長期計画で資格取得を目指している人のために5年コースもあり、教室も、横浜市青葉区鉄町にある横浜教室(本校)のほか、六本木ヒルズ17階に六本木教室を置いて有識者の便宜を図っている。  
 したがって、在校生の中には、医師・公認会計士・弁理士・外国の弁護士等の資格を持った人もいるし、本年度の新司法試験合格者(9名)の入学時の職業も情報処理・証券・金融・プログラマー等多岐にわたっている。反面、仕事の都合等で休学する人もあり、1学年の定員は70名だが、今春の第1回卒業生はその7割くらいであった。なお、専任教員28名のうち、実務家教員は、裁判官出身者10名、検察官出身者1名、弁護士7名の18名である。  
 ところで、3年という修学期間では短いのではないか、研修所における修習期間も短縮されたこともあり、促成ではないかという声がある。  
 しかし、法曹養成という観点からは、3年が5年になっても左程変わらないのではないか。池波正太郎の「剣客商売」に、主人公秋山小兵衛の言として、「剣術というものは、10年一生懸命にやらぬと強くなったという自身(心)になれない、これを20年続けると相手の強さが見えてくる。さらに10年続けると今度は自分がいかに弱いかということがわかる…」という趣旨の件があるが、法曹にも同じことが言えるからである。そういう意味では、資格を得るという点では促成であっても止むを得ないのではないかと思う。問題は、その短い期間に、将来の法曹を目指す者として何をどう学べばよいのかということであろう。  
 私は、「弁護士倫理」・「法的文書作成の基礎」・「調停仲裁の手続」等の授業を担当しているが、どの科目も既成の教材となるべきものが見当らない。そこで、やむを得ず弁護士生活37年の経験の中から様々な事例や判例・文献等の資料を収集するなどして2年かけて自前の実務的な教材を作成した。いずれも司法試験科目ではないが、試験戦線の兵站部を担っているつもりで、法的なものの見方・考え方を理解してもらえるような授業をするよう心がけている。  
 ところで、横浜弁護士会には多数の桐蔭高校出身の会員がいらっしゃるし、また、横浜教室の敷地内には、横浜地方裁判所から移築復元した「旧陪審法廷」のある立派な「メモリアルアカデミウム」があるので、お気軽に見学などしていただければ幸いである。
桐蔭横浜大学法科大学院教授・弁護士 村瀬 統一

理事者室だより(8) 首都圏弁護士会支部サミット開催に向けて奮闘中
副会長 伊藤 信吾
 本年私は、相模原支部所属ということで、同支部主管の「首都圏弁護士会支部サミット」の担当副会長となっております。
 首都圏弁護士会支部サミットは、2003年に当会川崎支部が主管して開催されたのがスタートです。それ以来、毎年首都圏の支部が持ち回りで開催して、支部の現状を訴え改善を求める運動をして参りました。   
 相模原支部は、平成6年5月に17名で発足しました(現在は会員は40名を越えています)。支部発足当時から、相模原支部でも合議事件を執り行うことが出来るように「司法シンポジウム」(平成14年開催)を開催したりして参りました。  
 相模原市は、津久井郡と市町村合併により入口が70万人を越えて、政令指定都市を目指す体制が整っております。政令指定都市の裁判所で合議事件が行われないということは前例がありません。  
 支部サミット当日は、支部若手会員を中心とした寸劇や、首都圏の各支部紹介、支部の現状と課題についてのパネルディスカッションを予定しております。相模原支部会員が総力をあげて準備を進めております。  首都圏弁護士会支部サミット in相模原のお知らせ   
 是非、多くの皆様に支部サミットへ参加頂くようお願い申し上げます。  

こちら記者クラブ 裁判所の様子も…
 先日、故郷の弁護士がこんな話をしていた。職業を尋ねられ、弁護士だというと唐突に「マンションの上の子どもの声がうるさい。眠れないんだけど慰謝料って取れるの?」との質問。「場合によるけど、まずは大家に話すなり、直接その家と話をつける努力をするべきでは。改善されないようなら相談してみて」と無難に答えたところ「そういう手間が面倒だから法律で解決してほしいんだろう。直接交渉して危険な目に合わされないとも限らない」と言い返されてしまったのだという。センセイは嘆いていた。「田舎だというのに、こんな話ばかり増えてきた。ちょっと嫌だと(すぐ)訴える。大事に至る前にまず裁判…」  
 司法担当記者になって半年。警察取材との掛け持ちでなかなか裁判所に足を運べないのが現状だが、威厳ある建物の中では日々、比較衡量のため生々しいやり取りが繰り広げられていると知った。さらに刑事裁判においては当事者の心に踏み込む内容で、涙する被告人の姿にメモを取りながら動揺したこともある。そんな緊迫した裁判の一方で、前述したセンセイの話。  
 裁判員制度の周知やテレビ番組の影響で法律の垣根が低くなってきたのは確か。しかし「裁判が身近になります」という裁判所のアナウンスが意図しない形で広がっているのでは?と感じることもある。裁判所の様子も徐々に変わっていくのかなぁ。
 時事通信社 武田 彩


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