桐蔭横浜大学法科大学院の特徴は、これからの弁護士像を「ハイブリッド法曹」と位置づけて、社会で活躍してきた人や法律以外の分野を専攻してきた人などに門戸を広げているところにある。
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そのため、企業法務などで働きながら長期計画で資格取得を目指している人のために5年コースもあり、教室も、横浜市青葉区鉄町にある横浜教室(本校)のほか、六本木ヒルズ17階に六本木教室を置いて有識者の便宜を図っている。
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したがって、在校生の中には、医師・公認会計士・弁理士・外国の弁護士等の資格を持った人もいるし、本年度の新司法試験合格者(9名)の入学時の職業も情報処理・証券・金融・プログラマー等多岐にわたっている。反面、仕事の都合等で休学する人もあり、1学年の定員は70名だが、今春の第1回卒業生はその7割くらいであった。なお、専任教員28名のうち、実務家教員は、裁判官出身者10名、検察官出身者1名、弁護士7名の18名である。
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ところで、3年という修学期間では短いのではないか、研修所における修習期間も短縮されたこともあり、促成ではないかという声がある。
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しかし、法曹養成という観点からは、3年が5年になっても左程変わらないのではないか。池波正太郎の「剣客商売」に、主人公秋山小兵衛の言として、「剣術というものは、10年一生懸命にやらぬと強くなったという自身(心)になれない、これを20年続けると相手の強さが見えてくる。さらに10年続けると今度は自分がいかに弱いかということがわかる…」という趣旨の件があるが、法曹にも同じことが言えるからである。そういう意味では、資格を得るという点では促成であっても止むを得ないのではないかと思う。問題は、その短い期間に、将来の法曹を目指す者として何をどう学べばよいのかということであろう。
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私は、「弁護士倫理」・「法的文書作成の基礎」・「調停仲裁の手続」等の授業を担当しているが、どの科目も既成の教材となるべきものが見当らない。そこで、やむを得ず弁護士生活37年の経験の中から様々な事例や判例・文献等の資料を収集するなどして2年かけて自前の実務的な教材を作成した。いずれも司法試験科目ではないが、試験戦線の兵站部を担っているつもりで、法的なものの見方・考え方を理解してもらえるような授業をするよう心がけている。
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ところで、横浜弁護士会には多数の桐蔭高校出身の会員がいらっしゃるし、また、横浜教室の敷地内には、横浜地方裁判所から移築復元した「旧陪審法廷」のある立派な「メモリアルアカデミウム」があるので、お気軽に見学などしていただければ幸いである。 |
桐蔭横浜大学法科大学院教授・弁護士 村瀬 統一 |