1年目は休みなし |
第57期 会員 竹中 一真 |
親しくさせていただいているO先生からのご依頼とあって、二つ返事で本原稿執筆を承諾してしまった。しかし、奮闘、奮闘、奮闘…と考えてみるも特段「奮闘」した覚えがない。若しくは、日々奮闘しているので、咄嗟に「奮闘」した記憶が浮かばないのかもしれない。 |
そういえば、弁護士登録をしたばかりの秋、刑事法廷デビュー戦で、ドアを開けて颯爽と弁護人席に向かうべく視線を前方へやると、受験時代の友人Wさん(現弁護士、横浜弁護士会所属)が司法修習生席に座っていたので、えらく動揺した。それで、Wさんに、「笑いを噛み殺したような笑顔」(少なくとも私にはそう見えた)をされたことはどうも「奮闘」ではないだろう。 |
そういえば、続く冬、初めての離婚事件で、すべてお膳立てをして公正証書作成の予約を公証役場に入れておいた。ところが、予約前日になって、突然依頼者から「先生、やっぱり私たち、やり直すことにしました」などと連絡をもらったのも「奮闘」ではなさそうである。 |
そういえば、弁護士登録をした1年目はほとんど休みをとらなかった(今でもそれほど変わりはないが)。これは、とりあえず「奮闘」と言えそうだ。駆け出しだからガンバルゾという思いもあった。また、とある知人に言わせれば、私の前世の1つは「修行僧」だったらしいので(?)、そういうふうに己を追い込むのが嫌いではないのかもしれない。 |
とは言うものの、休みなく働いているうちに、整体を生業とする我が弟に、「これまでずっと兄貴の身体を診てきたけれど、今、史上最悪の状態」とまで言われてしまった。うむー、心が張っているから疲労に気づかなかったけれども、身体は正直なものらしい。若い気でいながら、いつか突然バタンキューと倒れてしまうのも嫌だ。たまには美味いものでも食べて、温泉にでも浸かってリフレッシュしなければ…。 |
ということで、時折、少し贅沢をして美味いものを飲み食いしたり、仕事後に事務所近所の海に面した露天風呂に浸かりに行ったりするようになった。趣味も大事にしようという気にもなった。もともとが多趣味であるから、気分を盛り上げれば随分ワクワクしていられる。たとえば、思い切って買ったオーストリア、珠玉のスワロフスキー社製超高級双眼鏡EL8・5×42WBを片手に丹沢山系へ…とか、手が一杯あってかなりカッコイイ千手千眼観世音菩薩立像を…とか。
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「私のホビー」コーナーになってしまいそうなので詳細はやめておくが、そういうふうに、プライベートでもささやかな幸せを感じることが、良い仕事を続けていく秘訣なのだと思うこの頃である。
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