当会は「趣味の達人」がそろっている。 |
うちのボスは虚無僧の尺八の名人だし、ある若手女性会員は映画『スゥイング・ガール』なみのビッグバンドの結成をもくろんでいる。裁判所近くの画廊で個展をひらいている会員も多い。 |
もともと無趣味な私の趣味は「トイガン」である。モデルガンやエアソフトガンといったおもちゃの鉄砲のことだ。モデルガンは火薬をつかって発火させるが、弾はでない。エアソフトガンは低圧ガスや電動バッテリーの力でBB弾というプラスチック製の弾丸を飛ばす(近年は環境保護のため二酸化炭素と水に分解する生分解バイオBB弾が主流になりつつある)。 |
で、私のコレクションはモデルガンでなく、エアソフトガンの方だ。これで敵味方にわかれて戦争ごっこをするのである。 |
このエアソフトガン、最近はどうも評判がよくない。違法な改造エアガンの発砲事件がつづいたせいだ。実際は、市販されている大部分のエアソフトガンは違法改造に対する歯止めがかかっており、極悪改造できるのはほんの一部の製品にすぎない。とはいえ、おもちゃとして売られている製品に極悪改造をほどこし、空気銃なみの威力をもたせてしまうのだから、とんでもない話である。殺傷能力のある「違法エアガン」や「改造パーツ」が堂々とネットで売られ、だれでも手に入れることができる。これはもう日本型「銃」社会の誕生である。 |
今春、警察庁の主導で銃刀法が改正され、ハイパワーのエアガンは準空気銃として所持が禁止になった。違反すれば1年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金となる。改正銃刀法は8月下旬から施行だ。昭和40年代のモデルガン規制を上まわる、エアガンに対する全面規制の開始である。こういった規制がおこなわれると普通は関係業界から悲鳴や抗議がおきる。が、今回に関しては業界あげて歓迎ムードである。一般ユーザーも「規制やむなし」の声が多い。いままでウヤムヤだった合法と違法の境界がはっきりして、エアソフトガンが「おもちゃの世界」に戻ってきたのであるから、私も大賛成である。事実、改正銃刀法の施行をまえにして、通販やネットからは極悪エアガンや改造パーツがきれいさっぱり消えてしまった。 |
もともと鉄砲の形をした玩具が平和な社会と共存するには、それを趣味とする愛好者の一人ひとりが法律とルールとマナーを守らなければならない。今度のエアガン騒動をきっかけに、私は、直木賞作家の逢坂剛先生や映画監督、漫画家、イラストレイター、ライターの人たちに呼びかけて「トイガン文化を守る会」を設立した。いまやトイガンは年間200万丁が流通し、おもちゃ文化の確立したカテゴリーとして社会に根づいている。このユニークなおもちゃ文化が消えることなく次世代にひきつがれるように、広く安全性の遵守と環境保護を呼びかけていこうと思っている。自分の趣味が「公益活動」につながったのだからやりがいがある。いや、「公益活動」とはおこがましい。これはやっぱり「趣味活動」だ。 |
「トイガン文化を守る会」公式サイト
http://home.b04.itscom.net/toygun |
(関 博行会員) |