横浜弁護士会新聞

2006年7月号  −2− 目次

子どもの日  記念行事 愛国心を法律に定めることの意味 「教育基本法『改正』と 憲法問題を考える」に参加して
 5月9日、当会と日弁連が共催して集会「教育基本法『改正』と憲法問題を考える」が開催された。まず、東京都の小学校教員、元神奈川県立高校教員の2名から、学校現場の現状の報告がされた。職員会議で採決挙手が禁じられていること、高校進学率が下がっていること(神奈川は全国ワースト2とのこと)などの事実を踏まえての報告を聞き、学校が、「ゆとり」とはほど遠い場になっていることを感じた。
 報告に続き、高橋哲哉東京大学大学院教授が講演をした。
 高橋教授は、教育基本法改正案、自民党憲法草案、靖国神社問題等について、史実を踏まえて、平易な言葉で語った。
 特に愛国心に関しては、「愛国心を持つことの是非が問題なのではなく、法律に定めることの意味、効果が問題なのである。自然な感情であれば、ひとりひとりの自然な考えに任せればいい。しかし、教育目標として法律に愛国心(国を愛する態度を養うこと)を定めれば、どのような態度が愛国的態度であるか、それを誰がどのように評価するのか、という問題が生じる。教育行政が考えるところの『愛国心にふさわしい態度』をとらなければ、評価されないであろう」と語った。
 評価にさらされるということは、「私は私の考える愛国心を持っています」という言い分は通らないということなのだ、ということを改めて考えた。
 当日は、平日の夜にもかかわらず、約150名の参加があり、5階会議室が満員になる盛会であった。
(関守 麻紀子会員)

専門実務研究会紹介I 
倒産法研究会 実務に密着、損はさせません
 倒産法研究会は、平成12年度に設立された研究会で、当会の専門実務研究会の中で最も歴史のある研究会です(と思われます)。平成17年度の単年度登録者数は120名を超え、設立以来登録した会員は約220名にも及んでいます。
 研究会が設立された平成12年は倒産件数が飛躍的に増加していた時期であり、研究会では、この間、相次いで改正された倒産諸法制をフォローしながら、急増する県下の倒産事件に対応できるだけの基本的な知識やノウハウの蓄積及び伝達に務めてきました。
 近年は平成17年1月に施行された新破産法に対応した企画を数多く実施し、例えば、平成16年度には夏から秋にかけて早朝に「新破産法条文読み合わせゼミ」(全12回、ラジオ体操付き!)を開催し、新破産法施行直後には横浜地裁作成の「破産管財人の手引き」発行に合わせて横浜地裁破産部裁判官による新破産法の講演会等を開催しました。
 また、昨年度は、管財事件を多く手がけている会員が実務家の視点から基本書等には書かれていない疑問点を分かりやすく説明した「新破産法管財人連続講座」(全7回)を実施しました。
 このように過去2年間の研究が主に新破産法に対応したものであったことから、本年度は、「企業再生の実務」をテーマに研究する予定です。神奈川県下では企業再生のノウハウが十分に蓄積されていないとの認識のもと、1年間かけて、基礎的な考え方から専門的な知識まで、幅広く習得していきたいと考えています。
 具体的には、企業再生に詳しい外部講師を招聘して再生実務の視点やノウハウを学ぶとともに、会員相互の研究発表によって基本的知識の習得を図りたいと考えています。単なる民事再生事件だけではなく、広く企業再生の手法や実務的視点の習得を目指します。
 また、倒産法制は範囲が広く、各裁判所による運用に委ねられている事項が多いため、実務上は裁判所の運用内容が重要となります。研究会では、従前と同様に、横浜地裁の運用状況についても適宜情報提供していきたいと考えています。
 研究会に参加を希望する方は、5月下旬に弁護士会からFAX送信した申込用紙に必要事項をご記入の上、本多麻紀会員宛にご連絡下さい。年会費は5000円となっていますが、損はさせません!?
(村松 剛会員)

基本事項から実務運用まで 充実の2時間 人権擁護委員会 働く人部会研修会
 5月18日午後3時から2時間にわたり、当会会館5階の大会議室において、人権擁護委員会働く人部会主催の労働事件に関する研修が行われ、50名を超える会員が出席した。
 三嶋健会員は主に賃金に関して、佐藤正知会員は主に解雇に関してそれぞれ講義を行った。また、いずれの講師も、4月から開始された労働審判制度に関しても言及した。
 労働事件に関し経験豊富な両講師が、基本的な事項について、丁寧な説明を行ったこともあり、労働事件の基本知識を学ぶには極めて有意義な講義であった。
 更に、両会員の講義は、基本的な事項を解説するにとどまらず、労働審判制度について、実務の運用にまで具体的に踏み込んだ、実践的な解説も多く含んでいた。例えば、裁判官以外の審判員には陳述書以外の書証が事前に送付されない(横浜地裁の運用であり、東京地裁では陳述書も含めた全ての書証が送付されないとのこと)ため、申立書に証拠を引用するにあたり、訴状における引用よりも更に詳しい引用を行うべきであるとの指摘などは、労働審判制度の運用開始にあたり、裁判所との折衝の当事者であった佐藤会員ならではの実務的な指摘であった。
 終身雇用制度が崩壊し、雇用の流動化が進みつつある今日、一般の法律相談にも労働事件の相談が持ち込まれることは十分に予想され、弁護士が労働事件に対する知識や理解を深めていく必要性は高まっていると思われる。
 今回の研修会は、そうした必要性に十分応えるものであり、2時間という短い時間の中に必要な情報が散りばめられた、密度の濃い研修会であった。
(田渕 大輔会員)


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