横浜弁護士会新聞

2006年12月号  −1− 目次

日本司法支援センター神奈川地方事務所 発足から1か月 順調な滑り出し
記念式典の模様
 10月2日、日本司法支援センターが業務を開始した。
 神奈川地方事務所(法テラス神奈川)、同川崎支部(法テラス川崎)、同小田原支部(法テラス小田原)では、午前9時からの業務開始に先立ち、各事務所で開業記念セレモニーを行った。
 法テラス神奈川では、山下光所長から、神奈川県内の民事扶助事件数を飛躍的に拡大していきたいとの挨拶があり、横浜地裁所長、当会会長などから祝辞が寄せられ、その後、所長・来賓らによるテープカットが行われた。
 また、各事務所では業務開始にあたり、法曹関係者を始め、各士業、関係団体等から多数の参加を得て、開始式典のパーティを開催した。
 法テラス神奈川では、開業当日午後5時30分、日弁連副会長、横浜地裁所長、横浜家裁所長、横浜地検検事正を始めとして、各士業団体などから120名がロイヤルホールヨコハマに集まり、法テラス神奈川の発足を祝った。出席者からの祝辞では、法テラスの活動に対する期待が寄せられるとともに、関係機関との連携強化の必要性が訴えられた。
 法テラス川崎支部では3日、法テラス小田原支部では4日に、それぞれ各支部の法曹関係者や政財界から多数の参加を得て、業務開始式典が行われた。
発足から1か月を経過して
 法テラス神奈川が発足して、1か月が経過した。 
 この1か月の業務運用状況は、本所・両支部を併せて、法律相談313件、民事の代理援助決定数192件、司法書士による書類作成援助15件(10月28日現在)、被疑者国選38件、被告人国選314件となっており(10月31日現在)、ほぼ順調な滑り出しといえよう。
 被疑者国選の件数がやや想定より少ないが、告知等の問題が解決されれば、さらに増加するものと見込まれる。
 法テラス神奈川では、スタッフ弁護士は置かないとの方針のもと、一般の契約弁護士・司法書士により法律相談及び事件処理を行っているが、これまでに弁護士338名、司法書士122名が、法テラスと民事法律扶助契約を締結し、国選登録についても、469名の会員が契約締結しており(10月25日現在)、心配された国選担当者の配置も、事業開始までになんとかクリアーすることができた。
 しかし、今後、相談件数等の増加や、特に平成21年度からの被疑者国選弁護対象事件の範囲拡大にあたり、スタッフ弁護士を置かない方針を堅持するのみで事件を処理するとの方針を堅持するためには、さらに多くの会員の協力が不可欠である。
 法テラス神奈川の発足に当たっては、当会から、法律扶助協会の業務担当経験のある職員が複数移籍して業務に当たっているが、準備不足であったことは否めず、業務開始日には、情報提供職員が使用するパソコンのパスワードが与えられていなかったり、コールセンターからの転送回線がダウンするなど、次々と問題が生じた。しかしながら、中村れい子事務局長をはじめ、事務局員が一丸となって業務にあたっており、1か月を経過して、全体としては円滑な業務遂行が計られるようになってきている。
 民事の代理援助事件の審査には、これまでと同様に、当会会員を中心とする審査委員があたっている。手続きの簡素化を工夫するなど迅速な決定に努めているが、利用者の利便のため、開始決定までの期間をさらに短縮するよう、所長の激が飛んでいるところである。
 このほか、法テラスの業務のもう一つの重要な柱とされている情報提供業務であるが、業務開始からの1カ月の件数は、コールセンターからの転送のほか、神奈川地方事務所の本所・支部への直接の問い合わせを含め、391件にのぼっている。情報提供業務については、当初準備されたマニュアルが十分に機能していないなど、まだまだ問題点はあるが、今後、研修等により改善を目指しているところである。
 法テラスの業務は、まだ開始したばかりであり、当会の法律相談センターや、当番弁護士制度を運営している刑事弁護センターとの連携など、検討すべき点は多いと思われる。
 また、平成19年4月からは、これまで法律扶助協会の自主事業として行われてきた刑事被疑者弁護援助事業・少年付添人援助事業などが日弁連から法テラスに一括委託される予定であり、その具体的手続きなどこれから検討しなければならない問題はまだまだ山積している。
 今後とも、会員の一層の理解と協力をお願いしたい。
(法テラス神奈川 副所長 水地 啓子)

水原弁護士会とさらなる交流進む 韓国の法制度を体感
 10月27日、木村会長をはじめとする理事者5名を筆頭に、国際交流委員会委員・会員有志が集まり、当会と姉妹弁護士会関係にある韓国・水原(スウォン)地方弁護士会への訪問を行った。水原を訪れるのはこれで2年ぶり2回目であるが、水原地方弁護士会の曹会長はじめ同会会員のみなさんの暖かい歓待を受けた。
 同日は水原地方弁護士会の全面的な協力のもと、水原地方裁判所および水原地方検察庁をも表敬訪問し、さらには水原南部警察署内部を見学することができた。これは今回の訪問中「捜査の可視化」をテーマとするセミナーを開催したのに合わせ、法曹三者のみならず韓国の警察の現状をも視察するためである。
 セミナーでは日本の現状を当会の黒木勉会員が発表した後、韓国の現状について興味深い発表を聞くことができた。
 韓国でも、暴力的・脅迫的取調等により自殺者が出るなどしていることを重く見ており、「密室での取調」をなくすべきであるという意識は非常に高かった。
 実際、捜査の可視化実現は韓国のほうが日本より一歩進んでいる。検察庁では、取調状況の録画用カメラが常時設置されている検察官室を見学し、また裁判所では自白の任意性に関する立証のために取調状況録画テープが用いられる話を裁判官から直接聞いた。さらに警察署では被疑者が早急に接見を行いたいときにはテレビ電話によって弁護人と接見可能なシステムを見学でき、日本より進んだ現状を目の当たりにして非常に刺激を受けた。
 国際交流と言ってもその形は様々であるが、今回の訪問は単なる人的交流だけではなく、韓国の法制度をまさに体感することで日本の法制度について改めて考える非常によい機会になった。弁護士として幅広い視野を持つために、今後も積極的に他国の法制度を学ぶべきであるとの思いをあらたにした実り多い訪問であった。
(会員 北島 美樹)

山ゆり
 今となっては思い出したくもない、という方も多いかもしれないが、今年は、サッカーW杯が開催された年だった。日頃はあまり馴染みのない国名も聞かれたためなのか、地球儀が良く売れたそうだ
 第二次世界大戦中にチャーチルが閣議を開いた地下司令室が、ロンドン市内に残されている。薄暗い室内に当時の机や通信機器などが展示されており、時間が止まっているようだ。壁には大きな世界地図が掲げられていた。やはり、まずは自分の国を見ようとするものだ……が、無い?世界地図の中央に位置しているはずなのだが……あった!地図の隅に小さな島国が
 教室で見慣れていた世界地図には、当たり前のように日本が中央に描かれていた。ラジオでFENを聴いているふりをしていたころ、ファーイーストネットワークという言葉に違和感があったのは、そのせいかもしれない。ところが、経度零度のイギリスを地図の中央にすると、日本は確かにファーイーストであった
 地球は丸い。世界の中の自分を知るには、地球儀の方が良さそうだ。埃をかぶった地球儀を引っ張り出してみよう、と思った皆さん。「ソ連」「西ドイツ」などと書いてありませんか?
(市川 統子)

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