2025年04月25日更新
本年3月25日、東京地方裁判所は、文部科学大臣が求めた宗教法人世界平和統一家庭連合(以下「旧統一教会」)に対する解散命令請求について、旧統一教会の解散を命じる決定をしました。
過去に宗教法人法81条1項1号の「法令に違反」する行為に当たるとして解散命令が出されたのは、オウム真理教等に対する2件だけであり、いずれも刑法違反を理由としていましたが、本年3月3日の最高裁決定においては、刑法違反に限らず民法上の不法行為であっても「法令に違反」する行為に当たり得ることが明らかにされていました。
そして今般、東京地方裁判所は、多数の民事訴訟において認定された旧統一教会の不法行為は、信者の献金勧誘などの行為について組織性が認められ、信者の不安をあおって高額な物品購入や寄付を勧誘するなどの行為の態様は総じて悪質であり、約40年間全国的に行われ、総体として類例のない膨大な規模の被害を生じさせたものであるとして、旧統一教会の行為が「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」に当たると認定しました。
その上で、解散命令は信教の自由の重要性に鑑みると必要でやむを得ないといえることが必要としつつ、旧統一教会は、根本的な対策を講ずる契機や機会があったにもかかわらず不十分な対応に終始してきたとして、解散命令は必要かつやむを得ないとしました。かかる裁判所の判断は、被害者救済に向けて重要な契機となり得るものです。
当会は、1980年代後半から消費者問題対策委員会の委員を中心に霊感つぼ商法などへの霊感商法問題に取り組み、1990年代からはオウム真理教により殺害された元当会会員の故坂本堤弁護士の遺志を継いで、オウム真理教による宗教被害救済にも取り組んでまいりました。
そして、2022年7月以降旧統一教会の問題が再注目されてからは、日本弁護士連合会と連携して霊感商法等の被害に関連する法律相談を実施し、旧統一教会に関する相談を始めとする被害相談に対応してまいりました。
旧統一教会については、信者本人だけでなくその家族にまで重大な影響を及ぼす被害も生じています。旧統一教会の即時抗告により、本件解散命令は引き続き上級審で審理されることとなりましたが、これまで霊感商法問題等の被害救済に取り組んできた当会としては、裁判所が本件解散命令の判断に至ったことを契機に、国に対し、被害者救済に向けた法整備をなすことを求めるとともに、宗教の名の下での人権侵害を許さない社会を目指して、引き続き努力していく所存です。
以上
2025年4月24日
神奈川県弁護士会
会長 畑中 隆爾
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