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「日本学術会議法案」に反対する会長声明
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「日本学術会議法案」に反対する会長声明
2025年03月28日更新
政府は、3月7日、国会に「日本学術会議法案」(以下「法案」という。)を提出した。法案は、現行の日本学術会議法(以下「法」という。)を廃止し、現行の日本学術会議(以下「学術会議」という。)に代えて、特殊法人としての新たな「日本学術会議」(以下「法人」という。)を2026年10月に発足させるというものである。 法案は、学術会議がその職務を「独立して」行うという現行法の規定を置いておらず、また、法人の外部から、会員の選定や業務運営等を幾重にもチェックする制度を導入すること等を定めており、現行の学術会議とは性格の異なる組織とするものである。そればかりか、内閣総理大臣の法人に対する調査、是正の権限、法人の国際団体への加入に対する内閣総理大臣の承認等、法人に対する強大な権限を政府に与えるものである。 法案による学術会議の改編は、日本の「科学者の内外に対する代表機関」(法2条、法案1条)たるナショナル・アカデミーが本来有すべき独立性・自律性を失わせ、これによって学術会議の学問の自由を侵害するものである。
現行の学術会議は、政府から独立して(法3条)、政府に対する勧告等の職務を行う(法4条、5条)、国の「特別の機関」であり(内閣府設置法40条3項)、会員の選考は、学術会議自身が「優れた研究又は業績がある科学者」から候補者を選考して推薦し、内閣総理大臣がこれを任命するが(法17条)、内閣総理大臣による任命は形式的なものであるとするのが従来の確立した政府解釈であり、さらには会員の辞職・退職には学術会議の同意ないし申出が必要とされる(法25条、26条)など、政府からの独立性と徹底した自律性が認められている。
しかるに、法案は、まず、法人の機関として、法人の会員の選定方針の策定等に対して意見を述べる選定助言委員会(法案26条)、法人の活動・運営等に意見を述べる運営助言委員会(法案27条)、及び法人の業務を監査し調査する等の権限を有する監事(法案19条)を設置するとする。さらに、内閣府に、法人の中期的な活動計画について意見を述べ、法人の自己点検評価等に対し意見を述べる日本学術会議評価委員会(法案51条)を設置するとする。。 選定助言委員会及び運営助言委員会の委員は会員以外から選任し(法案26条、27条)、監事及び評価委員会委員は会員以外から内閣総理大臣が任命し(法案23条、51条)、国際団体の加入に、内閣総理大臣の事前の承認が必要とされる場合がある(法案41条)など、法人に対し、外部からその業務遂行をチェックして、外部の意向を及ぼす仕組みとなっている。 また、会員候補者の選考・会員の選任については、候補者の選考は法人外部委員からなる選定助言委員会の意見を聴取して策定される選定方針に従うものとされ、「会員、大学、研究機関、学会、経済団体その他の民間の団体等の多様な関係者から推薦を求めることその他の幅広い候補者を得るために必要な措置を講じなければならない」とされ、さらに、「行政、産業界等との連携による活動」等の活動実績を有する科学者が含まれるよう候補者の構成についての配慮が求められている(法案30条)。このような様々な制約の下で、会員の選考が、現在の会員が次期会員にふさわしい科学者を推薦して選考する現行のコ・オプテーション方式とは異なるものとなり、さらには「優れた業績又は研究がある科学者」(法17条、法案9条)という会員の要件が歪められるおそれがある。 加えて、法人発足時に新会員となる「会員予定者」候補者125名を選考する候補者選考委員会委員を現行学術会議会員のうちから選ぶ旨の規定は存在せず、同委員を現会長が任命するに当たっては、内閣総理大臣が指定する学識経験者と協議しなければならないとされており(法案附則6条)、新会員の選考は、現行会員の推薦に基づくものではなくなるおそれがある。 法案は、このように、学術会議を構成する会員の選考・選任における自律性を奪うと同時に、現行学術会議との連続性を切断するものでもあり、学術会議の、政府から独立した基本的なあり方が継承されなくなることが危惧される。 しかも、法人化に伴って、内閣総理大臣は、立入検査を含む検査・報告徴収の権限(法案49条)、不正等及びそのおそれのある行為の是正措置を講ずる権限(法案50条)など、法人に対する強大な権限を有することとなっている。 また、法人の財政基盤に関しては、政府が予算の範囲内において必要と認める金額を補助することができるとするにとどめており(法案48条)、法人がナショナル・アカデミーとしての役割を果たすに必要な安定した国家財政支出が確保されなくなることが危惧される。
以上のような内容の法案は、学術会議が有している独立性、自立性を損ない、学問の自由(憲法23条)を侵害するものである。 日本国憲法が学問の自由を特に保障する趣旨は、明治憲法時代に国家権力が学問の自由を侵害した歴史を踏まえ、その反省に立ち、真理の発見・探究を目的とする学問の自由を保障し、学問に対する国家権力の介入を排除するところにあり、研究者個々人の人権としてのみならず、大学など、研究者が属する学問共同体における学問の自由と自治を制度として保障するものである。 また、学問が人類と社会の発展に資するためには、「学術の広く深い成果が総覧され、多様な見解が時流や狭隘な利害関心に阿ることなく検討された上で、公正で合理的な選択肢が提供され」る必要があるところ(日本学術会議2021年4月22日声明「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」前文)、学術会議は、時の政府に対し、その時々の時勢や利害関係にとらわれずに、科学的な根拠に裏付けられた提言をする役割を担っており、政府に対する勧告や諮問に対する答申(法4条、5条、法案38条、39条)の権限を十分に機能させるために、学術会議には、より一層の政府からの独立性、組織としての自律性が求められる。 しかし、法案は、学術会議に代わる法人に対し政府の統制を及ぼして、その政府からの独立性と組織としての自律性を損なうものであり、学術会議に保障されるべき学問の自由を侵害するものである。
政府による学術会議の組織改編は、2020年10月の内閣総理大臣による6名の新会員候補者の任命拒否に遡る。任命拒否後時を置かずして、学術会議の組織改編の議論が開始され、繰り返されてきた結果、最終的には、内閣府が設置した「日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会」が2024年12月に報告書を公表したが、法案は、この報告書を受けたものである。 当会は、2020年11月12日、「内閣総理大臣による日本学術会議会員の任命拒否に抗議し、同会議が推薦する科学者の速やかな任命等を求める会長声明」を公表し、内閣総理大臣による任命拒否は、当該科学者にとっては政治権力による自らの研究・実績の否定であって、学問の自由の直接の侵害であること、同時にすべての科学者にとって学問の自由に基づく学問研究に対する脅威となること、すなわち任命拒否は学問の自由及び学術会議の独立性への恣意的な政治判断による侵害であることを指摘して抗議し、6名を速やかに任命することを求めた。しかし、現在においても、政府は、任命拒否の理由を示しておらず、6名の任命もなされておらず、学術会議は法定の会員数を欠いた違法な状態が継続している。 かかる違法状態を是正しないままに新たな「学術会議」を発足させることは、任命拒否によって生じた違法状態を覆い隠すことにほかならない。
以上のとおり、任命拒否によって生じた違法状態が是正されずに放置されたまま、法案により新たに法人を発足させることは、学術会議とその会員等の科学者の学問の自由を侵害するものである。 学問の自由が脅かされたとき、その影響が、ひいては私たち国民一人一人に及ぶことは、歴史が示すところである。かかる事態を拱手傍観することはできない。 よって、当会は、法案に強く反対する。
以上
2025年3月25日
神奈川県弁護士会
会長 岩田 武司
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