ページの先頭です。
本文へジャンプする。
サイト内共通メニューここまで。

会長声明・決議・意見書(2024年度)

在留資格の有無にかかわらず外国籍の子どもの就学機会の確保を求める会長声明

2025年03月28日更新

 2025年1月24日付の新聞報道により、さいたま市に住むトルコの少数民族クルド人の小学6年生(11歳)の児童が、昨年9月、通っていた小学校を除籍されていたことが判明した。報道によれば、児童と家族は2023年に難民申請して特定活動の在留資格を得ていたが、2024年7月に難民不認定となって在留資格を失ったことから、さいたま市教育委員会が同年9月6日付で児童を小学校から除籍したとのことである。

 同教育委員会は、報道があった2025年1月24日当日の夜に会見を開いて対応の誤りを認めて速やかに復学させる方針を明らかにし、児童は30日から復学した。報道によれば児童は「学校はやっぱり楽しい」と笑顔を見せたとのことだが、一方で、修学旅行に参加できなかったことを悲しんでいるとのことであり、約5か月もの長期にわたり教育を受ける権利を奪われたことの不利益は計り知れない。

 国籍や人種、在留資格の有無にかかわらず、日本に滞在するすべての子どもは、等しく初等教育を受ける権利を有する(子どもの権利条約第28条、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第13条、第14条)。日本政府も、2011年12月16日付の内閣総理大臣答弁において、「我が国の公立の義務教育諸学校においては、在留資格の有無を問わず、就学を希望する外国人児童生徒を日本人児童生徒と同様に無償で受け入れる」と明確に述べており、文部科学省は「外国人の子どもの就学機会の確保」のため、在留カード等の提示がない場合でも、居住地等の確認について柔軟な対応を行うよう、各教育委員会に対して伝えている。

 このように、在留資格がなくても義務教育を受けられることは、相当長期に亘り実務として定着していたのであり、今般なぜ文部科学省に事前の確認もせず、このような対応がなされたのか検証がなされる必要がある。

 文部科学省が2023年5月に発表した調査結果によれば、不就学の可能性がある外国人の子どもの数は全国で8601人であり、神奈川県内だけでも852人にのぼる。国籍、人種、在留資格の有無にかかわらず、全ての子どもの就学の機会を確保することは喫緊の課題であり、まして、現在就学している子を除籍するなどという判断は、今後二度とあってはならない。

 当会は、本件除籍処分について強い遺憾の意を表明する。そして、このようなことが二度と起きることのないよう、文部科学省に対しては、全国の教育委員会に対し、外国人児童生徒関係の通知等を確実に周知すること、及び、神奈川県内の各教育委員会に対しては、同様の事例が他に存在しないか緊急に点検し、改めて、外国籍の子どもの就学機会の確保に努め、安心して教育を受けられる教育環境の整備に取り組むことを求める。

以上

 

         2025年3月25日

                        神奈川県弁護士会 

                          会長 岩田 武司

 

 
 
本文ここまで。