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会長声明・決議・意見書(2024年度)

『福井女子中学生殺人事件』再審開始決定を受け、再審法改正を求める会長声明

2024年11月14日更新

  2024年(令和6年)10月23日、名古屋高等裁判所金沢支部は、いわゆる「福井女子中学生殺人事件」(以下「本事件」という。)第2次再審請求事件について、再審開始決定をし(以下「本決定」という。)、その後同決定は確定した。

  本事件は、1986年(昭和61年)3月に、福井市内で女子中学生が殺害された事件である。再審請求人の前川彰司さん(以下「請求人」という。)は、1987年(昭和62年)3月に逮捕され、1990年(平成2年)9月に第一審で無罪判決が、1995年(平成7年)2月に控訴審で懲役7年の有罪判決がそれぞれ言い渡され、1997年(平成9年)11月に上告棄却により有罪が確定した。その後、2004年(平成16年)7月に第1次再審請求がなされ、2011年(平成23年)に再審開始の決定がされるも、2013年(平成25年)3月にこれが取り消され、再審開始には至らなかった。2022年(令和4年)10月、第2次再審請求がなされ、裁判所の適切な訴訟指揮により、これまで開示されていなかった287点の証拠が開示された。

  確定判決は、主要関係者らの供述を主たる証拠として、請求人を犯人と認めたが、新たに開示された証拠には、主要関係者らの供述の信用性を否定する方向の証拠が含まれていた。

  本決定は、新旧証拠を検討した結果、主要関係者甲が、自己の利益を図るために請求人が犯人であるとのうその供述を行い、捜査に行き詰まった捜査機関において他の主要関係者らに対して甲の供述に基づく誘導等の不当な働きかけを行い、他の主要関係者らも迎合して供述が形成された疑いが払拭できないとして、主要関係者らの供述の信用性を否定し、請求人が犯人であることについて合理的な疑いを超える程度の立証がされているとは認められないと判断して再審開始を決定したものである。

  本決定が主要関係者らの供述の信用性を否定する根拠となった新証拠は、第2次再審請求において初めて検察官から開示されたものであり、開示に至るまでには、最初の再審請求がなされた2004年(平成16年)7月から18年以上が経過している。また、本決定に至るまでには、最初の再審請求がなされた時点から20年以上が経過しているが、このような長期間を要したのには、2011年(平成23年)の再審開始決定が、検察官による異議申立てにより取り消されたことにも原因がある。

  当会は、2023年(令和5年)3月7日開催の臨時総会において、「えん罪被害者の救済と適正手続の保障のため速やかな再審に関する法改正を求める決議」を採択し、いわゆる袴田事件の再審公判における無罪判決が言い渡された2024年(令和6年)9月26日には、関東弁護士会連合会と連名で、「刑事訴訟法の再審規定(再審法)の速やかな改正を求める声明」を発出した。これらの決議・声明において、現行の刑事訴訟法に、再審における証拠開示規定が存在しないことや、再審開始決定に対する検察官による異議申立てが認められていることの問題点を指摘してきたが、本決定は、改めてこれらの問題点を浮き彫りにするものである。

  本決定が示すように、再審請求手続に関する法改正は喫緊の課題である。当会は、政府及び国会に対し、再審請求手続における証拠開示の制度化、再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止、再審請求手続における手続規定の整備を含む、再審法の全面的な改正を速やかに行うよう求める。

 

2024年11月7日 

神奈川県弁護士会

会長 岩田 武司 

 
 
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