2024年11月07日更新
国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)は、2024年10月29日、日本政府に対して、婚姻後の夫婦同姓が強制されている民法の規定を改正し、夫婦が婚姻後も別姓を選択できる制度を導入することを求める勧告を行いました。CEDAWによる勧告は、選択的夫婦別姓の導入のみならず、妊娠中絶に配偶者の同意を求める母体保護法の規定の撤廃、人権侵害を受けたと主張する個人が各人権条約の条約機関に直接訴え、人権侵害の救済を求めることができる個人通報制度を定める「選択議定書」の批准など重要な問題について言及されていますが、今回は選択的夫婦別姓の導入について述べたいと思います。
CEDAWによる夫婦同氏制度を定めた民法の規定の改正を求める旨の勧告は、2003年、2009年、2016年に続いて4回目であり、前回に続いて、CEDAWが日本政府に対して取り組みの状況を2年以内に報告するよう求める、「フォローアップ項目」に指定されています。
氏名の一部を構成する姓は、個人の呼称としてのみならず個人のアイデンティティを構成する重要な一要素であり、婚姻によってその変更を強制されることは、社会的な不利益の問題を超えて、個人の尊厳に関わる問題です。すなわち、改姓を強制されることは、個人の人格権、人格的利益を侵害されているということです。また、CEDAWの勧告が指摘するとおり、法律婚をする夫婦の約95%において女性がその姓の変更を余儀なくされているという現状のもとでは、民法の規定は間接的差別に該当すると言わざるを得ず、法の下の平等の観点からも是認できません。さらに、婚姻に際して別姓を選択したい夫婦にとっては、夫婦別姓の選択は幸福追求のための一つの手段であり、他人や国家がこれを禁止したり制限したりする理由はありません。
当会は、2024年6月12日に行われた通常総会において、民法750条を改正して選択的夫婦別姓制度を導入することを求める総会決議を行い、同年11月4日に開催した「人権シンポinかながわ」においてこの問題を取り上げましたが、今回のCEDAWによる勧告を受けて、改めて国や政府に対して一刻も早く民法を改正して選択的夫婦別姓制度を導入するよう求めます。そして、当会としては、選択的夫婦別姓制度の導入が実現するまで、民法の改正に向けた活動を全力で行っていくことを宣言します。
2024年11月7日
神奈川県弁護士会
会長 岩田 武司
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