2024年10月11日更新
本年9月26日、袴田巌さんの第二次再審請求事件について静岡地方裁判所が言い渡した無罪判決に対して、検察庁は控訴を断念し、本年10月9日に無罪が確定しました。同判決においては、当時有罪の決め手とされ、再審事件において大きな争点となっていた「5点の衣類」のほか、ズボンの切れ端及び本件犯行を自白した検察官調書の、あわせて3種の証拠について、いずれも捜査機関がねつ造したものなどと判断されました。これまで袴田さんの無罪を信じて長年にわたり同氏を支えた姉の袴田ひで子さんをはじめとする関係者の皆様や再審事件の弁護団に対して、改めて深い敬意を表したいと思います。
1966年の事件発生から58年を経て、ようやく袴田さんの無罪が確定し、袴田さんは真の自由を得ることができました。しかし、その間、袴田さんは47年7か月間にわたり身柄を拘束され、そのうち約33年間については死刑囚として死の恐怖に怯えながら過ごすことを余儀なくされてきました。その結果として袴田さんは拘禁反応による心身の不調を来してしまいました。この間の袴田さんのかけがえのない日々は二度と戻らないのです。
えん罪被害の救済のためにこれだけの長い時間がかかってしまった大きな原因として、再審法の規定が極めて不十分であることが挙げられます。具体的には、再審法の手続規定が整備されていないこと、再審請求手続において証拠開示の制度がないこと、再審開始決定に対して検察官の不服申立権が認められていることなどです。
当会としては、これまで再審法改正を含めたえん罪防止のための活動に取り組んで参りましたが、今回の無罪判決確定を受け、今後もえん罪の防止・救済のための制度改革に尽力するとともに、再審法改正の実現に向けて一層努力して参る所存です。
2024年10月11日
神奈川県弁護士会
会長 岩田 武司
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