2024年10月16日更新
鹿児島県警察が、令和5年10月2日付で、「捜査資料の管理について」と題して、「最近の再審請求等において、裁判所から警察に対する関係書類の提出命令により、送致していなかった書類等が露呈する事例が発生」しているなどと説明した上で、「再審や国賠請求等において、廃棄せずに保管していた捜査書類やその写しが組織的にプラスになることはありません!!」と強調し、「未送致書類があっても、不要な書類は適宜廃棄」するよう呼びかける内容の内部向け文書(以下「本文書」という。)を執務資料として作成し、県警本部や警察署内で配布していたことが明らかとなった。
これについて、鹿児島県警察は、本文書において周知しようしていた内容は、必要な書類は確実に検察庁に送致すること、その写しなどがある場合にはこれを適切に管理・保管するということであったが、本来の趣旨とは異なる受け止めを招く不適切な表現・内容であった旨の説明を行った。
しかし、上記文言は、再審や国家賠償請求訴訟で利用されるのを防ぐために未送致の捜査書類の廃棄を促す内容であるとしか読み取ることができず、説明内容が不合理であることは明らかである。
本文書は、刑訴法第246条が「司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定めのある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない」、犯罪捜査規範第196条第2項が「事件の送致又は送付後において、新たな証拠物その他の資料を入手したときは、速やかにこれを追送しなければならない」、同第273条が「重要又は特異な事件等必要があると認められるときは、捜査書類の写しを作成して保存しておかなければならない」とそれぞれ定めている趣旨に反し、公文書である捜査書類を警察の一方的かつ恣意的な判断によって廃棄することを推奨するものであり、到底容認することができない。
また、本文書の内容は、刑訴法の定める証拠開示制度の適切な運用を阻害するとともに、捜査の違法性・不当性が問題となった場合における真相解明を遠ざけるものでもあり、この点からも大きな問題を内包している。
よって、当会は、鹿児島県警察が作成・配布した本文書の内容に抗議すると共に、今後全ての警察に対して、恣意的判断により未送致証拠を廃棄することのないよう求める。
2024年10月10日
神奈川県弁護士会
会長 岩田 武司
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