2024年01月18日更新
相模原市においては、今年度中の「相模原市人権尊重のまちづくり条例」の制定に向け、2023年3月には、当該条例に盛り込むべき内容について同市人権施策審議会からの答申が市長に提出された。その後、11月17日には市が条例案の骨子を発表し、2024年2月には、議会に条例案が提出される予定となっている。
上記答申においては、①前文に津久井やまゆり園事件をヘイトクライム(差別的動機に基づく犯罪)と位置づけ、決して容認することはできないものであると明記すること、②不当な差別的言動を禁止し、勧告、命令を経ても止めない場合、公表し、秩序罰(過料)又は行政刑罰(罰金等)を科すこと、③差別の事由を人種、民族、国籍、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、障害、疾病、出身その他の事由とすること、④差別事案が発生した場合、市長は必要に応じて声明を出すこと、⑤一定の独立性を有する専門的な機関として「相模原市人権委員会」を設置し、被害者救済のための調査や説示のほか、積極的な機能を持たせることなどが求められている。この内容は、実際に差別をなくし、また差別の被害者の救済に効果が期待できるもので画期的であり、表現の自由や刑罰法規の明確性に配慮し、拡大解釈がなされないようにしつつ、上記答申の内容を前提とした条例の制定が望まれる。
当会は、これまで、ヘイトスピーチの根絶を希求して、さまざまな意見を発出してきた。たとえば、2018年1月に「インターネット上のヘイトスピーチによる人権侵害に対して警鐘を鳴らすとともに、その是正に向け関係者の取り組みを求める会長談話」、川崎市の差別のない人権尊重のまちづくり条例の2019年12月の制定に先立ち、同年6月に「川崎市・相模原市に対して、ヘイトスピーチ対策として実効性のある条例の制定を支持する会長声明」、2021年3月には「川崎市でヘイトスピーチ等が止まないことを憂慮し、川崎市に対し、条例に基づくより一層の取り組みを求め、相模原市における条例制定を支持する会長声明」を発出してきたところである。
相模原市において、市長が、川崎市に続き、差別禁止条例制定に向けて強い決意をもって取組を続けていることは、高く評価されるべきところ、当会は、引き続き、すべての市民がそれぞれの生活の場において、自らの幸福を追求し、平和で平穏に日々の生活を送ることができるよう願い、ヘイトスピーチの根絶に向け活動を継続する立場から、相模原市において、上記の審議会答申を前提に、実効性ある条例の制定を求めるものである。
2024年1月17日
神奈川県弁護士会常議員会
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