2023年12月21日更新
本年12月18日、法制審議会刑事法(情報通信技術関係)部会において、事務当局作成の要綱(骨子)案(以下「要綱(骨子)案」という。)を同部会の意見として法制審議会(総会)に報告することが決定された。
要綱(骨子)案には、電磁的記録による令状の発付・執行等に関する規定の整備、刑事施設等との間における映像と音声の送受信による勾留質問・弁解録取の手続を行うための規定の整備及び映像と音声の送受信による裁判所の手続への出席・出頭を可能とする制度の創設等が盛り込まれる一方、これまで検討されてきた留置施設にいる被疑者及び被告人と弁護人とのオンライン接見については取り上げられていない。
被疑者及び被告人が立会人なく弁護人と面会し、その援助を受ける接見交通権は、憲法上保障された重要な権利である。逮捕段階における被疑者の権利保障、特に遠隔地で身体拘束を受ける被疑者及び被告人の権利保障という観点から、弁護人との迅速な接見を可能とするオンライン接見を実現する必要性は極めて高く、当会は、本年5月25日、オンライン接見の実現に向けた議論がなされることを求める会長声明を公表し、オンラインを活用した接見交通の実現に向け、法制審議会刑事法(情報通信技術関係)部会にて具体的な議論がなされることを強く求めていた。
訴訟に関する書類を電子化し、令状手続のほか、勾留質問や弁解録取手続をオンラインで実施する規定を新設する一方、被疑者及び被告人がオンラインで弁護人と接見して、その援助を受けることができる制度を設けない要綱(骨子)案は、捜査・公判手続の効率化を優先し、被疑者及び被告人の権利保障を置き去りにする不公正なものであると言わざるを得ない。この点、極めて遺憾である。
従前の検討では、オンライン接見の環境設備に多額の予算が必要であることを理由に、その法制化に慎重な意見がみられたが、必要性の高い地域から段階的に試行するなどの方法により柔軟に対応することも可能である。接見交通権保障の改善が技術的に可能であるのに、それをないがしろにすることは許されない。当会は、国に対し、引き続きオンライン接見の法制化に向けた取り組みがなされることを強く求める。
2023年12月21日
神奈川県弁護士会
会長 島崎友樹
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