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会長声明・決議・意見書(2023年度)

いわゆる『谷間世代』への一律給付実現の法整備を求める会長声明

2023年06月15日更新

当会は、国に対し、司法修習期間中無給であった新第65期から第70期司法修習生(いわゆる『谷間世代』)に対する不平等を是正するために一律給付実現の法整備を求める。

 

  1.  日本国憲法は立法、行政、司法の三権分立を取り入れ、司法権を独立させ、行政権による人権侵害を防ぎ、人権保障の砦とした。この司法権を担うのは裁判官、検察官、弁護士の法曹であるところ、司法を担う法曹の養成は国の責務であり、法曹は国民一人一人のための社会的基盤である。
     法曹になるには司法試験に合格後、司法修習を受けなければならないが、司法修習は、専門家たる法曹を養成するための重要な過程であり、国民の人権の守り手を国が養成する制度である。そのため、これまで司法修習生には厳格な修習専念義務が課せられてきた。
  2.  上記の司法修習の役割から、司法修習中の生活資金は国が給与として支払うこととし、戦後1947年に司法修習制度が開始されて以来、司法修習生には国家公務員の給与に準じた給費が支給されてきた。ところが、2011年採用の新第65期司法修習生からこの給費の支給が打ち切られ、希望者のみが生活資金の貸与を受ける制度となった。2017年の裁判所法改正により、同年採用の第71期司法修習生からは、かつての給費の代替措置としての修習給付金の支給が開始されたものの、新第65期から第70期までの司法修習生に対して遡って給費が支給されることはなかった。
     上記谷間世代の期間以外の年に修習を受けた司法修習生が受給していた生活資金を、上記谷間世代の期間に修習を行った司法修習生のみが受け取れないことに合理的理由は見出しがたく、法の下の平等に違反しており、かかる不平等は速やかに是正されなければならない。
  3.  現在、生活資金の貸与を受けた新第65期から第69期までの司法修習生の貸与金の返済が既に始まっており、最後の谷間世代にあたる第70期を対象とした貸与金の返済が今まさに始まろうとしている。当会及び日弁連は、谷間世代の弁護士を救済すべく、給付金(当会30万円・日弁連20万円)を独自に一度支給することとしたが、谷間世代が司法修習中に支給されるべきであった生活資金にはほど遠いものである。
  4.  そもそも次の時代を担う法曹の養成は国がその責任と負担において行うべきものである。この問題は司法の場でも指摘され、名古屋高等裁判所2019年5月30日判決では、「従前の司法修習制度の下で給費制が果たした役割の重要性及び司法修習生に対する経済的支援の必要性については、決して軽視されてはならない(中略)例えば谷間世代の者に対しても一律に何らかの給付をするなどの事後的救済措置を行うことは、立法政策として十分考慮に値するのではないかと感じられるが、そのためには、相当の財政的負担が必要となり、これに対する国民的理解も得なければならないところであるから、その判断は立法府に委ねざるを得ない。」と判示されている。
  5.  日弁連には、現在すでに国会議員の過半数(2023年5月末時点で379人)から応援メッセージが寄せられている状況であり、国民的理解という意味でも、本来谷間世代の司法修習生に支給されるべきであった生活資金相当額の一律支払いに向けた立法的判断が可能な状況下にある。
  6. そこで、谷間世代の不平等を是正するために一律給付実現の早期の法整備を求める。

 

 

2023年6月14日

神奈川県弁護士会

会長 島崎 友樹

 

 
 
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