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横浜地裁判決を受け、留置施設に対し被疑者と弁護人との秘密交通権を侵害しないよう求める会長談話
2023年03月06日更新
当会会員が国選弁護人を務めた刑事事件において、弁護人が収容中の被疑者に差し入れた被疑者ノートの記載内容を警察官が検査し、被疑者の意に反してそのノートの記載の一部を黒塗りさせたことによって弁護人としての活動を妨害されたとする国家賠償請求訴訟において、2023年3月3日、横浜地方裁判所は警察官が被疑者ノートを黒塗りなどさせたことは違法であると判断し、被告の神奈川県に対して損害賠償金の支払いを命じる判決を言渡しました。
刑事訴訟法39条1項は、弁護人依頼権を保障した憲法34条を受けて、被疑者・被告人に弁護人とだけは自由な接見(面会)ができることを保障しています。これを弁護人と被疑者・被告人との接見交通権といいます。そしてその面会が自由であるために捜査機関は面会内容に関与してはならず、接見内容の秘密も守られなければならないと定められています。これを秘密交通権といいます。
今回の横浜地方裁判所の判決では、被疑者と弁護人等との接見交通権及び秘密交通権は、憲法34条の保障に由来し、身体の拘束を受けている被疑者が弁護人等と相談し、その助言を受けるなど弁護人等から援助を受けるための基本的権利に属するものであり、弁護人にとっても、固有権の最も重要なものの一つであることを確認した上で、弁護人が差し入れる被疑者ノートは、接見時の口頭の意思疎通を補完し、又はこれと一体となって弁護人等の援助の内容となるものである旨判示しました。
そして、被疑者ノートの内容が警察官に知られる可能性があっては、被疑者 が被疑者ノートへの記載を差し控えるという萎縮的効果が生じ、ひいては被疑者と弁護人等との接見交通が阻害されるから、被疑者及び弁護人等の受ける不利益の程度は大きいとし、警察官が被疑者の所持品検査をするにあたり、原則として検査対象が被疑者ノートに該当するかどうかを外形的に確認する限度で許容されるというべきであり、外形上、被疑者ノートに該当することが確認された場合には、被疑者の言動等から、留置施設の規律及び秩序を害するおそれがある等の特段の事情がない限り、内容の検査を行うことは国家賠償法1条1項の適用上違法となるとした上で、被疑者が被疑者ノートに記載した事項を黒塗りさせたり、記載する内容を指示したりすることはいずれも違法であると判断しました。
接見交通権及び秘密交通権は、身体拘束されている被疑者の権利を守るために極めて重要な権利ですので、被疑者と弁護人との交通の内容が、捜査機関に漏れることがあれば、それらの権利が守れないことになってしまいます。
横浜地方裁判所の判決はこれを明確に判断しており、今後の刑事弁護活動と警察の留置業務に大きな影響を与える重要な判決であると考えます。
留置施設においては、本判決に基づき、違法な対応を真摯に反省するとともに接見交通権及び秘密交通権の重要性を十分に理解し、これを違法に侵害することがないよう強く求めます。
2023年3月6日
神奈川県弁護士会
会長 髙岡 俊之
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