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侮辱罪に関する改正刑法について慎重な運用を求める会長声明
会長声明・決議・意見書(2022年度)
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侮辱罪に関する改正刑法について慎重な運用を求める会長声明
2022年09月09日更新
2022年(令和4年)6月13日、参議院本会議において、侮辱罪の法定刑の引上げをその内容に含む「刑法等の一部を改正する法律案」が可決・成立した。この法律は、同月17日公布され、このうち侮辱罪の法定刑の引上げは同年7月7日から施行されている。
侮辱罪に関する刑法の改正は、インターネット上での誹謗中傷への対策として行われたものであり、その対策を講じること自体の必要性は認められるといえる。
しかし、本法案については、成立前から、正当な論評を萎縮させ、表現の自由を脅かすものであるという問題点が指摘されていた。この問題点は、なお残り続けている。
侮辱罪が規制する「侮辱」とは、他人に対する軽蔑の表示であり、その方法は問われず、言語のほか、図画や動作等による侮辱もあり得るものとされている。そのため、運用次第では国民の表現活動が広く処罰対象となるおそれがある。
また、名誉毀損罪(刑法第230条第1項)については、表現の自由や知る権利との調和を図るため、公共の利害に関する場合の特例が設けられているが、侮辱罪にはそのような特例規定がない。そのため、国会議員や地方公共団体の長といった公職にある者に対する批判のような、公共の利害に関する論評であっても、対象者に対する軽蔑の表示が含まれていれば、処罰対象とされるおそれがある。
そのような侮辱罪について、改正刑法により法定刑が引上げられたことにより、有罪判決を受けたときに科される自由刑の刑期が大幅に長くなることになった。この法定刑の引上げに伴い、刑法改正前には侮辱罪による逮捕・勾留は限定された一定の要件下でのみ許されていたところ(刑事訴訟法第199条第1項ただし書)、そのような制限がなくなり、より広く身体拘束が可能となった。
当会は、関係諸機関に対し、侮辱罪に関する改正刑法については上記のような問題点があることに鑑み、慎重な運用を求めるとともに、今後も表現の自由に対する不当な制約が行われないようその運用状況を監視していく所存である。
2022年9月8日
神奈川県弁護士会
会長 髙岡 俊之
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