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会長声明・決議・意見書(2022年度)

ヘイトクライムを根絶するため、包括的な差別禁止法の制定等を求める会長声明

2022年08月10日更新

2020年1月初旬、川崎市の多文化交流施設「川崎市ふれあい館」に、在日韓国朝鮮人の抹殺を煽動する内容の年賀状が届き、同月27日には、川崎市職員宛に「川崎市ふれあい館」の爆破等を予告する葉書が届いたことを受け、当会は同月30日に国・神奈川県・川崎市に対し差別の根絶を目指すよう求める会長談話を発出したが、その後も、2021年3月には、「川崎市ふれあい館」館長宛てに、「死ね死ね死ね・・・」などと書かれた封書が届くなど、悪質な事件が続いている。

また、同年7月には、名古屋市の在日本大韓民国民団の県本部及び隣接する名古屋韓国学校の雨どいに火を付ける事件、同年8月には、在日コリアンが多く暮らす京都府のウトロ地区の空き家に放火し、隣接する住宅など計7棟を全半焼させるという深刻な事件まで発生した。住宅の1軒には小学生2名を含む一家が暮らしていたとのことであり、死者やけが人が出なかったことは偶然であったといえる。報道によれば、名古屋と京都の事件の被告人は裁判で事件の動機について、「韓国人に敵対感情があった」などと述べたという。

これまでも、在日韓国朝鮮人に対する脅迫などさまざまな悪質な事件は繰り返されてきたが、現実に住宅など計7棟の全半焼という放火事件に至ったことについては衝撃をもって受け止めざるをえない。

これらの犯罪は、まさに朝鮮半島にルーツを有する人々に対する差別的な感情に基づく犯罪(ヘイトクライム)であり、対象とされる属性を持つ人々に恐怖と絶望を与え、憲法13条で保障された平穏に生活する権利を侵害するばかりか、人種等に基づく差別を禁じる憲法14条や人種差別撤廃条約からも許されないものである。

また、差別的言動は、これを放置することによって、憎悪を増幅させ、暴力行為やひいてはジェノサイドや戦争へと発展していく危険性があることはつとに指摘されているところである。対象とされる属性を持つ人々への深刻な被害は言うまでもないが、社会にも憎悪と分断とをもたらすのであり決して看過できないものである。

日本政府は、人種差別撤廃条約の批准国として、人種差別を根絶する義務を負っているところ、いまだ包括的な差別禁止法もなく、ヘイトクライムの件数やその後の捜査及び有罪判決の統計などもとっていない。

当会は、強い危機感の下、これ以上の被害を出さないために、政府に対し、直ちにヘイトクライムの実態の正確な把握とこれを防止するために包括的な差別禁止法の制定を含む適切な取り組みを行うよう求める。

 

2022年8月9日

神奈川県弁護士会

会長 髙岡 俊之

 

 
 
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