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会長声明・決議・意見書(2022年度)

司法修習『谷間世代問題』の是正及び貸与金の返還の猶予を改めて求める会長声明

2022年06月10日更新

当会は、国に対し、司法修習期間中無給であった新第65期から第70期司法修習生(いわゆる『谷間世代』)に対する不平等を是正するための施策を講じること及びその施策が講じられるまでの間、これらの修習生が受けた貸与金の返還を猶予することを改めて求めます。

  1.  日本国憲法は立法、行政、司法の三権分立を取り入れ、司法権を独立し、行政権による人権侵害を防ぎ、人権保障の砦としました。この司法権を担うのは裁判官、検察官、弁護士の法曹です。司法を担う法曹の養成は国の責務であり、法曹は社会的インフラともいえます。
     法曹になるには司法試験に合格後司法修習を受けなければなりません。司法修習は法曹を養成するために不可欠な過程であり、司法修習生のためではなく、国民の人権の守り手を養成するためにあるのです。そのため、司法修習生には厳格な修習専念義務が課せられています。
  2.  上記の司法修習の役割から、司法修習中の生活資金は国が支給することとし、戦後1947年に司法修習制度が開始されて以来、司法修習生には公務員の初任給並の給与が支給されてきました。ところが、2011年採用の新第65期司法修習生から給与が打ち切られ、生活資金の貸与を受ける制度となりました。2017年の裁判所法改正により、同年採用の第71期司法修習生からは修習給付金の支給が開始されましたが、新第65期から第70期までの司法修習生に対しては、無給のまま何ら救済措置が取られませんでした。また新たに始まった修習給付金は月額13万5000円であり、全く不十分な額と言わざるを得ません。
     給与が打ち切られた2011年には1万1892人いた司法試験の出願者は減少を続け、2021年には3754人へ、2022年には3367人へ減少を続けています。
     国はこのことを真摯に受けとめ、制度の是正改善に努めなければなりません。
     現在の修習給付金を引き上げることはもちろん、特に無給という不平等な扱いを受けたままとなっている新第65期から第70期までの「谷間世代」に対する不平等は速やかに是正されなければなりません。
  3.  生活資金の貸与を受けた新第65期から第68期までの司法修習生の貸与金の返済が始まっており、第69期を対象とした貸与金の返済がまさに始まろうとしています。
     当会及び日本弁護士連合会は、谷間世代の弁護士を救済すべく、給付金(当会30万円・日弁連20万円)を独自に支給することとしましたが、谷間世代が司法修習中に受け取るべきであった生活資金にはほど遠いものです。そして、そもそも次の時代を担う法曹の養成は国がその責任と負担において行うべきものです。
     当会は、2003年以来、会長声明を繰り返し発出していますが、国は谷間世代に対する不平等を是正していません。そこで、改めて谷間世代の不平等を是正するとともに、その施策が実現するまで貸与金の返還を猶予するよう求めます。

 

2022年6月9日

神奈川県弁護士会

会長 髙岡 俊之

 

 
 
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