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会長声明・決議・意見書(2021年度)

地域の実情に即した司法サービスの充実を図るべく、司法予算の大幅増額を求める会長談話

2022年03月23日更新

  1.  2001年6月に司法制度改革審議会意見書(以下、「司改審意見書」といいます。)が政府に提出されてから20年が経過しました。司改審意見書は、司法制度改革を実現するために、裁判所等の人的物的体制を充実させ、司法に対する財政面の十分な手当が不可欠であるとし、政府に対して、必要な財政上の措置について特段の配慮を求めたものです。
     ところが、その後の司法予算(裁判所予算)は、最近10年間では国家予算に占める割合は0.3%台で推移し、かえって徐々に減少してきています。
     このような政府の措置は、司改審意見書が求めた財政上の特段の配慮とは相反するものであり、国民の裁判を受ける権利(憲法32条)の実質化の観点からは疑問なしとはいえません。
  2. 最高裁による「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」(第5回)によれば、単純平易な事件の割合は減少し、複雑困難な事件の割合が増加しているとのデータが示されています。実際に、民事第一審訴訟事件の平均審理期間はここ数年、明らかに長期化の傾向が見てとれます。また、同報告書では、今後の法的紛争一般の動向として、顕在化・増加し,複雑化・多様化・先鋭化が進むことが見込まれるとの認識も示されているところです。
     ところが、2012年から2021年の10年間で弁護士は約1万1000人増加(約1.35倍)となったのに対し、裁判官は大幅な増員はされていません(弁護士白書2021年版)。そして、第208回通常国会で成立した令和4年度予算では、裁判所の人件費は前年度よりも削減されました。
     このような状況では個々の裁判官の負担が減ることはなく、本来、裁判官の手持ち事件を減らして1件当たりの審理を充実させる必要性が高いにもかからず、むしろ逆行することにもなりかねないことが懸念されるところです。  
  3. そもそも、司法予算があまりにも小さかったため、司法の使い勝手が悪く、その改善を図るべく司改審意見書の提言がなされたものです。三権分立の1つである司法権を担う最高裁判所においても、限られた少ない予算の範囲でやりくりするのではなく、今よりはるかに多い司法予算を獲得して、社会に向かって大きくその役割を果たすべきです。
     冒頭で述べた司改審意見書及びそれに基づき実施された一連の司法制度改革における「国民の身近にあって、利用しやすく、頼もしい司法」という理念は現在もなお生きており、これを実現するためには、司法予算の大幅な増大を図らなければなりません。とりわけ市民の司法アクセス改善のためには、裁判所支部機能の拡充が求められます。  
  4. 神奈川県においても、地域の実情に即した司法サービスの整備はまだ不十分と言わざるを得ません。当会では、その改善を図るべく、法律相談等を拡充する取組はもとより、横浜地方裁判所相模原支部での合議制実施、横浜地方裁判所の小田原支部・相模原支部をはじめとする各支部での労働審判の実施、藤沢簡易裁判所をはじめとする各簡易裁判所への家庭裁判所出張所の併設などを訴え、関係自治体とも連携しつつ取り組んできました。
     現在、民事訴訟等のIT化が急ピッチで進められていますが、そうだとしても、身近な裁判所で紛争が解決できるという市民の利益は決して軽視できません。  
  5. 当会では、2014年7月10日「司法予算の大幅増額を求める会長声明」にて、裁判官及び書記官、職員などの人的側面、調停室等の増設や支部、出張所の新設・併設など物的側面について抜本的強化が必要であることなどを指摘して司法予算の大幅増額を求めておりますが、それから約8年近くが経過した今も必要性に変わりはありません。
     よって、当会は、政府に対し、地域の実情に即した司法サービスの充実を図るべく、司法予算の大幅な増額を改めて求めます。  

 

2022年3月23日

神奈川県弁護士会

会長 二川 裕之

 

 
 
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