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死刑執行に抗議する会長談話
2021年12月22日更新
本年12月21日、東京拘置所において共犯とされた2名、大阪拘置所において1名、計3名の死刑が執行されました。岸田内閣が発足して初めての死刑執行ということになります。
死刑は国家が人命を奪う究極的な刑罰であるところ、刑事裁判において誤判を完全には防止できないことに鑑みれば、取り返しの付かない不正義を招きかねない制度といえます。
国連総会では全ての死刑存置国に対して死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止を求める議案を8回にわたり採択しており、直近では2020年11月17日、加盟国193ヶ国中120ヶ国の支持を得て可決しています。多くの国で既に死刑は廃止ないしその執行が停止されており、2019年12月末日現在、法律上または事実上の死刑廃止国は142ヶ国に及び、世界の3分の2以上を占めています。そしてOECD加盟国38ヶ国中で死刑を国家として統一して執行しているのは日本のみです。なお、米国は前トランプ政権が昨年、17年ぶりに連邦レベルでの死刑執行を再開させていましたが、本年7月1日、バイデン政権は連邦レベルでの死刑執行を一時的に停止することを発表しました。また、同国では、死刑廃止州も年々増加しています。
日弁連は、2016年10月7日に開催された第59回人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、その中で2020年までに死刑制度を廃止すること等を国に求めました。
当会は2021年3月2日に開催された臨時総会において、「死刑執行の停止及び死刑制度の廃止に向けた取り組みを求める決議」をしています。この決議においては、過去に再審無罪が確定した4件の死刑事件、死刑確定囚である袴田巌氏の再審請求事件、名張毒ぶどう酒事件、飯塚事件を挙げて、誤判・えん罪の危険性が現実に存在すること、死刑執行はえん罪からの救済の道を閉ざすことになることを指摘しました。また、当会ではこれまでも死刑執行の度に抗議する会長声明等を発出してきました。それにもかかわらず今回死刑が執行されたことに対して、当会は強く抗議します。
今日、死刑をめぐる多くの情報が公開されておらず、その中で死刑が執行され続けていることは、民主主義の社会において大きな問題であるといわなければなりません。当会では死刑廃止に向けた勉強会や会員集会を連続して開催して会内での議論を深めていき、また、市民集会も開催して上記の総会決議に至りました。死刑制度の問題点や国際的な動向に鑑みれば、我が国においても死刑執行は直ちに停止され、死刑制度廃止に向けた取り組みがなされなければなりません。
当会は改めて今回の死刑執行に強く抗議するとともに、国に対し、死刑確定者に対する死刑の執行を直ちに停止すること、更に、死刑制度廃止に向けた具体的取り組みを開始することを強く求めます。
2021年12月22日
神奈川県弁護士会
会長 二川 裕之
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