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「津久井やまゆり園」における事件から5年の経過を受けての会長談話
会長声明・決議・意見書(2021年度)
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「津久井やまゆり園」における事件から5年の経過を受けての会長談話
2021年08月30日更新
2016年7月26日に発生した障害者支援施設「津久井やまゆり園」にて多数の入所者が死傷するという痛ましい事件から5年余が経過しました。現在、同施設の再編が進み、本年8月1日には、再建された「津久井やまゆり園」に40名の利用者が戻り生活を再開しています。
当会はこの未曾有の事件について、改めて亡くなられた方々へのお悔やみを申し上げ、また心身に傷を負い未だ苦しみを抱えておられる被害者の方々へお見舞いを申し上げます。
本件の犯人が有していた事件の動機には、優生思想と障害者差別がその背景にあったとされています。しかし本件を単に特異な考えを持つ犯人による特別な事件と捉えるべきではありません。上記犯行を後押ししたとも言われている日本社会における上記思想や差別意識は、事件から5年を経てもなお存在し続けていると言わざるをえません。
さらに、本件の検証過程では、同施設を始めとした県内の障害者支援施設において、不適切な身体拘束等の虐待事案やその疑いのある事案が発生していたことが明らかとなりました。また当初、重度障害者は地域移行の意思表出ができず地域移行自体も困難であるとの先入観があったことも否めません。こうした実態があったとすれば、これも社会の中の障害観、優生思想の存在とは無関係ではないはずです。
言うまでもなく、このような思想が容認される余地はありません。すべての人は、障害の有無にかかわらず、その尊厳が尊重され、自己決定に基づき幸福を追求する権利を有します。この大原則を一たび忘れてしまえば、優生思想などの障害のある人を排除しようとする思想が芽生え、差別や虐待を助長することにつながりかねません。私たち法律家は、これらの思想や差別・虐待を根絶するため、不断の努力を重ねる必要があります。
事件当時の「津久井やまゆり園」の利用者の方々は、当会会員も参画した県による意思決定支援の取り組みにより、それぞれの利用者の意思に応じて、新たなやまゆり園の園舎や、別法人のグループホームなど、それぞれ新たな生活の場を得ました。
新しい生活の場では、従来の大規模入所施設の延長ではなく、常に地域社会に開かれ、交流が行われる環境が守られなくてはなりません。大規模施設における管理性や閉鎖性、地域との隔絶といった問題性を二度と生じさせてはなりません。
地域社会において障害者に対する差別偏見をなくし、共に生きる社会を実現することは私たち法律家の責務でもあります。
私たちは、司法と福祉・地域の連携を担い、社会正義と基本的人権の擁護を使命とする法律家として、この悲劇的な事件を決して忘れることなく、今後も、優生思想、障害者差別および虐待を根絶させ、障害者の自己決定と社会参加の手助けができる専門家集団として、途切れることのない取り組みを続けていく所存です。
2021年8月30日
神奈川県弁護士会
会長 二川 裕之
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