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会長声明・決議・意見書(2021年度)

低賃金労働者の生活を支え、コロナ禍の地域経済を活性化させるために、神奈川県最低賃金の引き上げを求める会長声明

2021年07月15日更新

当会は、国に対し、中小企業への十分な支援策を講じることを求めるとともに、神奈川地方最低賃金審議会に対し、最低賃金の引き上げを答申するよう求めます。

  1.  昨年度、神奈川地方最低賃金審議会は、新型コロナウイルス感染症拡大の経済への影響を考慮し、最低賃金の引き上げ額を1円とする答申を行い、神奈川県の最低賃金の引き上げ額は1円(最低賃金額1012円)にとどまりました。今年度も、昨年度に引き続き、中央最低賃金審議会及び神奈川地方最低賃金審議会の答申は低賃金労働者にとって厳しいものとなることが予想されます。
  2. しかしながら、これまでの当会会長声明で繰り返し述べてきたように、2008年7月に施行された改正最低賃金法9条3項が「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性」を求めているにもかかわらず、実質的には、未だに最低賃金と生活保護との乖離は解消されていません。コロナ禍においても、低賃金労働者の生活を守り、地域経済を活性化させるために、最低賃金額の引き上げは継続して行われるべきです。
  3.  世界の国々の最低賃金に目を向けると、例えば、フランスでは、2021年1月に10.15ユーロ(約1329円)から10.25ユーロ(約1342円)に引き上げられました(1ユーロ131円で換算)。また、ドイツでも、2021年1月に9.50ユーロ(約1244円)に引き上げられ、同年7月からは9.60ユーロ(約1257円)、2022年1月に9.82ユーロ(約1286円)、同年7月に10.45ユーロ(約1368円)に引き上げられることが決定されています。さらに、イギリスでも、2021年4月から成人(23歳以上)の最低賃金が8.72ポンド(約1334円)から8.91ポンド(約1363円)に引き上げられました(1ポンド153円で換算)。
     このようにコロナ禍においても、多くの国々で最低賃金の引き上げが積極的に実現されているところであり、日本でも最低賃金の引き上げが実現されなければなりません。
  4.  もちろん、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を被っている中小企業の経営も考慮されなければなりません。しかし、中小企業の経営に関しては、国の支援策の拡充によって救済が図られるべきです。現在、国は、最低賃金引き上げに伴う中小企業への支援策として、「業務改善助成金」制度による支援を実施していますが、この制度は、中小企業にとって必ずしも使い勝手の良いものではなく、利用件数はごくわずかにとどまっています。
     国は、最低賃金を引き上げても日本の経済を支えている中小企業の経営に支障のないよう、諸外国で採用されている社会保険料の事業者負担分の減免措置や、中小企業にとって利用しやすく簡易な新たな補助金制度の創設など更なる支援策を講じるべきです。
  5.  コロナ禍において、小売店の店員、運送配達員、介護・福祉サービス従事者等社会全体のライフラインを支える職種の重要性が改めて認識されましたが、これらの職種の中には最低賃金に近い時給で就労する労働者も少なくありません。コロナ禍でも、最低賃金の引き上げを実現させてこれらの低賃金労働者を支え、社会のライフラインを維持していくことは極めて重要です。
     よって、当会は、国に対し、中小企業への十分な支援策を講じることを求めるとともに、神奈川地方最低賃金審議会に対し、最低賃金の引き上げを答申するよう求めます。

 

2021年7月14日

神奈川県弁護士会

会長 二川 裕之

 

 
 
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