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会長声明・決議・意見書(2021年度)

性的指向及び性自認による差別を解消する立法を求める会長声明

2021年07月15日更新

当会は、性的指向及び性自認による差別を解消し、性に関する多様性を認め、すべての人の平等を実現するための実効性のある立法を強く求めます。

  1.  本年の通常国会において、超党派の議員連盟が「性的指向及び性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」(以下「法案」といいます。)の上程を検討していました。この法案は、差別に対する禁止規定が存在せず、国や地方公共団体による理解増進に向けた取り組みも努力義務に留まるなど、その実効性は不十分でしたが、「性的指向」や「性自認」という文言が法律の中に取り入れられる我が国で初めての立法となるなど重要な意味を持つものでした。
     しかし、与野党の法案調整の中で、国会議員からLGBT等の性的マイノリティ(以下「性的マイノリティ」といいます。)に対する差別意識に基づく侮蔑的発言がなされ、性的マイノリティへの無理解を露呈し、結局法案上程にも至らなかったことは、遺憾に堪えません。
  2.  性的マイノリティは、人類の長い歴史の中で、制度的、社会的、更には倫理的にもその存在を否定され、排除されてきました。現在も侮蔑的発言や誹謗中傷を受け、性的指向・性自認の暴露(アウティング)に怯え、学校生活や職業生活での不利益な対応やハラスメントなどに苦しんでいます。また、法制度の不備により、結婚ができず、相続もできないなどの不利益を受けています。
     その結果、多くの性的マイノリティは、自己肯定感を保てない状況に置かれています。
  3.  日本政府は、これまで国連の自由権規約委員会や社会権規約委員会、人権理事会普遍的定期的審査等において繰り返し勧告等を受けてきました。にもかかわらず、いまだ国内において性的マイノリティに対する差別的取扱いが解消されない状況は、非常に深刻です。個人の性的指向や性自認は、人の生き方そのものに関わり、個人の尊厳の根幹部分といえ、これを理由に差別をすることは決して許されません。性的マイノリティに対する差別的取扱いは、個人の尊重(憲法13条)と法の下の平等(憲法14条)に反します。
  4.  当会は、2019年4月、人権擁護委員会の「両性の平等に関する部会」を「すべての性の平等に関する部会」に改称し、性的マイノリティに関する会員向け研修会や電話相談会を実施してきました。また、性的少数者への差別発言を許さない会長声明(2016年2月10日)、並びに、同性間の婚姻を認める法制度の整備を求める会長声明(2019年10月17日)を発出しています。
  5.  以上を踏まえ、当会は、国に対し、法案の問題点を見直し、性的指向及び性自認を理由とする差別を解消するための実効性ある立法を行うことを強く求めるとともに、今後も、性的指向や性自認に関わらず、すべての人が平等に暮らす社会の実現に向けて取り組んでまいります。

 

2021年7月14日

神奈川県弁護士会

会長 二川 裕之

 

 
 
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