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憲法記念日を迎えての会長談話
2021年04月30日更新
日本国憲法が施行されてから、本日で74回目の憲法記念日を迎えました。
本年も、昨年からの新型コロナ禍への対応に追われる日々が続いており、2月にはいわゆる感染症法・新型コロナ特措法などが改正されて感染症防止対策が強化されましたが、感染の拡大は未だに収まらない状況です。感染防止の名の下に、憲法上保障されている私権を必要以上に制限する方向に進むことがないよう、警戒しなければなりません。
4月15日には、今国会で初めて衆議院憲法審査会が開催され、憲法改正のための国民投票法改正案の早期成立を目指す動きがあります。憲法改正については、従前から議論されている憲法第9条のほか、現下の新型コロナ禍の中で緊急事態条項創設も問題提起されているところですが、立憲主義を堅持し、基本的人権の尊重や恒久平和主義を守るため、恣意的かつ拙速な憲法改正が行われることがないよう、今後の動向を注視する必要があります。
また、今国会には、昨年見送られた国家公務員法等改正案(定年延長)も提出されています。昨年は、政府が従来の法解釈を変更して、内閣の判断で検察官の定年後勤務延長等を可能とする特例規定を設けようとしていたことから、神奈川県弁護士会においても会長声明を発出し、憲法の基本原理である三権分立と法治主義を揺るがすものとして強く抗議していたところです。
今般の改正案では特例規定を設けず、検察官には国家公務員法の定年後勤務延長等の規定は適用しないと明記されて、昨年の改正案の事実上の撤回がなされましたが、今後も政府によって恣意的な法解釈の変更が行われないように注意しなければなりません。
日本学術会議の会員候補の任命拒否の問題も未解決ですが、政府は、内閣総理大臣による任命行為が形式的行為であるとする従来の法解釈を逸脱して任命拒否をしたものであり、これもまた恣意的な法解釈の変更であるとともに、日本学術会議の独立性、さらには学問の自由をも脅かすものとして看過できません。
県内に目を転じれば、川崎市において「差別のない人権尊重のまちづくり条例」が2020年7月に施行され、相模原市においてもヘイトスピーチ規制条例の制定の動きがありますが、未だに看過できない差別的言動が繰り返されている状況があります。また、県内に12施設ある米軍基地周辺では騒音・環境問題などが発生しており、県民が平穏に生活できる権利への配慮が求められています。さらに、本年3月には、横浜市において、相談担当職員の不適切な対応により生活保護申請の受付を拒否された事案が報道され、貧困者の人権保障に関して深刻な問題も生じています。
このように、憲法問題は、決して遠い中央政治での事柄なのではなく,ごく身近なところでも起こりうるものなのです。
神奈川県弁護士会では、これまで憲法問題に関する会長声明の発出のほか、県民の皆様に向けて憲法に関する出前授業(憲法学習会)やシンポジウムなどを開催してきました。これからも、日本国憲法の理念を県民の皆様と共有して寄り添いながら、「身近で利用しやすく頼りがいのある弁護士・弁護士会」を目指して人権擁護活動を推進していく所存です。
2021年5月3日
神奈川県弁護士会
会長 二川 裕之
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