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会長声明・決議・意見書(2020年度)

川崎市でヘイトスピーチ等が止まないことを憂慮し、川崎市に対し、条例に基づくより一層の取り組みを求め、相模原市における条例制定を支持する会長声明

2021年03月26日更新

  1. 私たちは誰もが、生活の基盤としての住居において平穏に生活し、人格を形成しつつ、自由に活動することにより、その品性、徳行、名声、信用等の人格的価値を獲得し、社会から評価を獲得する。この住居において平穏に生活する権利、自由に活動する権利、名誉、信用を保有する権利は、憲法13条に由来する人格権として保障される。

    それゆえ、本邦外出身者が、不当に差別され、地域社会から排除されないという権利は、生活の基盤である住居において平穏に生活し、人格を形成し、自由に活動し、名誉、信用を獲得し、これを保持することの基礎を成すもの、すなわち上記の人格権を享有するための前提として、強く保護されるべきである。

    また、人種差別撤廃条約や憲法14条が人種などによる差別を禁止していることなどに鑑みてもその保護は極めて重要であると言わなければならない(以上、横浜地方裁判所川崎支部平成28年6月2日決定参照)。

  2. ところが川崎市では、「差別のない人権尊重のまちづくり条例」が制定された直後である2020年1月、同市の多文化交流施設「川崎市ふれあい館」に在日韓国朝鮮人の抹殺を煽動する内容の年賀状が届いた。更に同月27日には、川崎市職員宛に「川崎市ふれあい館」の爆破予告と在日韓国朝鮮人に危害を加えることを予告するハガキが届くなど、ヘイトクライムが相次いで発生した。

    また2020年7月の上記条例施行後も、JR川崎駅前を中心に度々街頭宣伝によるヘイトスピーチが繰り返されているだけでなく、2020年11月以降は、川崎市内の公園等で、差別を煽動する落書きがしばしば発見されている。更にインターネット上では相変わらず、川崎に関連した多くのヘイトスピーチが散見される。

    冒頭で述べた憲法や条約の趣旨からすれば、本邦外出身者に対して差別を煽り、排斥を助長する言動は、決して許されない。当会は改めて、地元神奈川県で上記のような出来事が続いていることを深く憂慮する。

  3. この点川崎市が、予告された街頭宣伝に職員を派遣して監視するなど、さまざまな条例に基づく取り組みを進めていることは大いに評価できる。

    しかしその一方で、例えばインターネット被害について、2020年5月に差別書き込みの削除要請があったが、差別防止対策等審査会に諮問したのはそのごく一部であった。しかも審査に半年もの時間を要した上、実際に削除要請が実現したのはそのうちの数件であり、被害者の救済として不十分な点があることを指摘せざるを得ない。

  4. 不当な差別的言動の解消までには長い道のりと努力を要し、その課程において自治体の長の影響力は極めて大きい。よって川崎市長にあっては、引き続き、不当な差別言動は違法であって許さないという毅然とした姿勢を明確に表明し、条例に基づく取り組みをより一層きめ細やかに推進されることを求める。そして当会としても、川崎市と協力し、不当な差別的言動の解消に向けて積極的に取り組む所存である。

  5. さらに相模原市におけるヘイトスピーチ規制条例の制定をめぐっては、不当な日本人差別の条例であるとしてこれに反対する動きも見られる。しかしヘイトスピーチとは、特定の国又は地域の出身者であること又はその子孫であることを理由に、日本の地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう(ヘイトスピーチ解消法2条参照)。よってこれを規制しようとする条例が、日本人差別であるとの批判は当たらず、むしろいたずらに対立を煽るものであって不当である。

    当会は、2019年6月の会長声明で述べたとおり、表現の自由等に十分配慮しつつ、相模原市においても、引き続き、実効性のある条例制定が行われるよう支持するものである。

以上

 

2021年3月25日

神奈川県弁護士会

会長 剱持 京助

 

 
 
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