2021年01月29日更新
横浜刑務所で,2020年12月15日から2021年1月22日までに,受刑者87名,刑務官15名について新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が確認された。刑務所内でのクラスターの発生は月形刑務所に次いで2例目であり、さらに千葉刑務所、函館少年刑務所でも集団感染が確認されている。まずは事態の早期収束と、感染者の方々の回復をこころより祈念する。
刑務所を含む刑事収容施設は,「多数の被収容者が閉鎖空間において集団生活等を行っており,三つの密に該当する状況が生じやすいこと,ひとたび感染者が発生すると急速に感染が拡大する蓋然性が高い」ことが指摘されていた(2020年4月13日法務省新型コロナウイルス感染症対策基本対処方針)。今回この懸念が現実のものとなり、今後さらに、各地の刑務所で同様の事態が発生することが懸念される。
そもそも、刑務所の医療体制は平時においても極めて不十分と言わざるを得ず、神奈川県弁護士会においてもたびたび警鐘を鳴らしてきた。しかも横浜刑務所は全国平均に比べても65歳以上の高齢受刑者の割合が高く、COVID-19に感染した場合,重症化し、死に至るリスクは一般社会よりも高い。よって、これ以上の被害拡大を防止するためにも速やかに最大限の対策を講じることを期待する。
また法務省は、「矯正施設における新型コロナウイルス感染症感染防止対策ガイドライン」を作成し、徹底した感染予防対策を講じてきたと思われるが、結果として今回、大規模なクラスターの発生を防止できなかった。今後事態が終息した際には、徹底的な原因の究明と適切な情報の公開を求める。
なお横浜刑務所は,現在受刑者の面会を全て停止している。この点、集団感染の早期収束とさらなる感染拡大防止のため、人との接触の機会を減らす目的そのものは一定程度理解できるが、親族等との面会は「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」により受刑者の「権利」として位置づけられている(同法第111条1項)。よって、何らの代替措置を採ることもなく、一律に面会の機会を喪失させることは明らかに行き過ぎであり、個別の事情に配慮した対応が必要である。
また我が国では諸外国に比べ、「電話連絡」(電話等による通信。テレビ電話、ビデオ通信等を含む。)が受刑者のごく一部にしか認められていない。感染拡大防止のためにやむを得ず面会を制限する場合には、電話連絡などの代替手段を柔軟に活用することを求める。
2021年1月28日
神奈川県弁護士会
会長 剱持 京助
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