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会長声明・決議・意見書(2020年度)

外国人学校の幼児教育・保育施設を無償化制度の対象とすること等を求める会長声明

2020年10月23日更新

改正された子ども・子育て支援法が昨年10月1日から施行され、幼児教育・保育の無償化(以下「幼保無償化制度」という。)が始まった。幼保無償化制度は、「全ての子どもが健やかに成長するように支援する」(法2条)という基本的理念のもと制定されたものであり、認可幼稚園、認可保育園、認定こども園のほか、認可外保育施設、一時預かり事業、病児保育事業、ファミリー・サポートセンター事業やベビーシッターもその対象とされている。

ところが、朝鮮学校やインターナショナルスクール等、各種学校の認可を受けた外国人学校の幼児教育・保育施設(以下「外国人学校幼保施設」という。)に対して国は、「幼児教育を含む個別の教育に関する基準はなく、多種多様な教育を行っており、また、児童福祉法上、認可外保育施設にも該当しない」ことから、「法律により、幼児教育の質が制度的に担保された施設」とは言えないとして、幼保無償化制度の適用対象外とした(関係閣僚合意「幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針」2018年12月28日)。

しかし「保育の質」について懸念が指摘されていた認可外保育施設が、個々の保育の実態を精査することなく一律に制度の対象となっていることに照らせば、「外国人学校幼保施設」についてのみ「教育の質」を問うことには全く合理性がない。また、「多種多様な教育を行っている」点についていえば、そもそも「教育の質」とは無関係である。むしろ、日本で暮らす外国にルーツのある子どもたちが、出身国の言語や文化に基づく幼児教育・保育を受けられる環境を保障することは国の責務であり(憲法26条1項、子どもの権利条約28条1項、同30条)、国が推し進めてきた多文化共生の地域づくりという理念にも沿うものである。

従って、教育の実態を検証することもせず、「外国人学校幼保施設」を一律に幼保無償化の適用対象外とすることは、憲法14条、自由権規約第2条1項、社会権規約第2条2項、人種差別撤廃条約、子どもの権利条約2条1項などが禁止する差別的取扱いに該当するおそれもある。

この点、「外国人学校幼保施設」を含む一部の幼児教育・保育施設を無償化対象外としたことに対する批判を受け、国は、「地域における小学校就学前の子供を対象とした多様な集団活動等への支援の在り方に関する調査事業」の実施を決めた。これにより「外国人学校幼保施設」に対しても「新たな支援策」が検討されることになり、神奈川県内では、川崎市や横浜市が国から委託を受けて、朝鮮学校等が運営する幼稚園等の実態について調査が進められている。

よって当会は各自治体に対して、今後十分な調査を実施したうえで、国と協力し、速やかに必要な支援を実施することを求める。

もっとも「全ての子どもが健やかに成長するように支援する」という幼保無償化制度の趣旨からして、本来、「外国人学校幼保施設」に対しても他の幼児教育・保育施設と同様に無償化制度の対象とすべきであることは言うまでもない。よって、当会は国に対し、すみやかな法改正を実施し、幼保無償化制度の対象から「外国人学校幼保施設」を除外しないことを求める。

 

2020年10月22日   

神奈川県弁護士会   

会長 剱持 京助

 

 
 
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