ページの先頭です。
本文へジャンプする。
サイト内共通メニューここまで。

会長声明・決議・意見書(2020年度)

改めて、検察官に国家公務員法の定年後勤務延長規定を適用した政府の法解 釈変更の撤回と、検察庁法改正案中の勤務延長規定の削除を求める会長声明

2020年06月11日更新

 本年3月26日、当会は、「検事長の定年延長をした閣議決定に強く抗議し撤回を求め、国家公務員法等の一部を改正する法律案中の検察庁法改正案に反対する会長声明」を発した。その閣議決定(以下「本件閣議決定」という。)が、従来の政府解釈を変更して、定年後の勤務延長を定める国家公務員法81条の3を検察官に適用したのは、同法及び検察庁法に違背し、また、そのような政府の判断による官職の勤務延長を制度として導入しようとする検察庁法改正案が、検察官の独立性を失わせ、三権分立と法治主義を根底から揺るがすものであることを理由とする。

 

 ところでその後、上記検事長人事と検察庁法改正案に対する世論の反対が広がる中で、政府は5月18日検察庁法改正案の今国会での成立を見送ることとした。しかも、本件閣議決定の対象であった黒川弘務東京高等検察庁検事長が、新型コロナウイルス感染拡大下での緊急事態宣言中であった5月1日と13日、報道関係者らと賭けマージャンをしていたことが報道され、同月22日辞職するという事態に至った。

 

 しかし、このことによって、当会の上記会長声明が指摘した問題点が、何ら解決したわけではない。本件閣議決定が問題なのは、もともと検察庁法が予定していなかった検察官の定年後の勤務延長を、国家公務員法の規定を違法に適用することによって政府の判断で可能だとし、準司法作用を担う検察官の人事に政治が介入する道を開こうとした点にある。また、検察庁法改正案は、その閣議決定を受けた改正条項を組み入れ、このような政府の政治的判断による定年後勤務延長、さらにいわゆる役職定年後の勤務延長にも法的正当性を与えてこれを制度化してしまうことにより、憲法の基本原理すらも揺るがすものとなっているのであって、ことは重大である。

 

 黒川検事長の不祥事は、政府の判断ひとつで、いかに適格性のない者でも検察庁の要職に就けたりこれを継続させることが可能となることの危険性を、まさに浮き彫りにした。

 

 その危険性を除去するには、従来の政府解釈にも法規定にも違背して、国家公務員法の定年後勤務延長規定を検察官に適用できるとした政府の解釈変更を撤回して、検察官の独立性と政治的中立性を担保する従来からの検察庁法における定年退職制を堅持する必要がある。そして、その法制度を維持するため、検察庁法改正案中の定年後及び役職定年後の勤務延長に係る規定は、これを削除すべきである。

 

 よって当会は、改めて、政府の本件法解釈変更の撤回と検察庁法改正案中の勤務延長規定の削除を、強く求めるものである。

 

2020年6月11日         

                                            神奈川県弁護士会       

                                              会 長  剱 持 京 助  

 
 
 
本文ここまで。