2019年10月29日更新
訂正とお詫び
この度、本声明において、「26の自治体がパートナーシップに関する要綱等を制定している」と表記しておりましたが、正しくは、27の自治体でした。 また、「横須賀市や小田原市にて条例が制定されている」とも表記いたしておりましたが、正しくは条例ではなく要綱でした。いずれも訂正の上、お詫び申し上げます。 皆様には、大変ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
婚姻とは,当事者の人格的な結合であり,家族の維持形成における中心的な事柄であるが,現在,同性間の婚姻は認められていない。
そもそも憲法13条は,生命・自由及び幸福追求に対する国民の権利を保障しており,その一内容として公権力の干渉を受けない自己決定権が認められている。とすれば,家族の維持形成にかかわる事柄,すなわち,婚姻するかしないか,誰と婚姻をするのかの自由についても,自己実現という人格的価値を有するものとして,同条により保障されているはずである。
また,憲法14条1項は,法の下の平等を保障しているところ,現在,同性を恋愛の対象とする者は,自分が決めた相手と婚姻できないことから,異性を恋愛の対象とする者との間で不平等が生じている。
よって,同性間の婚姻を認めないことは,憲法13条及び14条に反している。
さらに,憲法24条1項は,「婚姻は,両性の合意のみに基づいて成立」すると規定し,同条2項は,「配偶者の選択,・・・離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては,法律は,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して,制定されなければならない。」と規定しているところ,第1項の趣旨は,婚姻が当事者の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべきことを明らかにするものであり,また,第2項の趣旨は,明治憲法時代の家父長制度の解体と,個人の尊厳を徹底した新しい家族制度の構築にある。
よって,憲法24条は,同性婚を禁止するものではなく,許容していると考えるべきである。
そして,現在,同性婚が認められていないことにより,同性カップルは,事実上・法律上,様々な不利益を受けている。
例えば,同性カップルは,民法上,同性パートナーの相続人にはなれない。同性パートナーが遺言によって遺贈を受けた場合,配偶者としての税額軽減措置が適用されず,むしろ,相続税額の2割加算が適用されてしまう。また,配偶者として遺族基礎年金・遺族厚生年金を受給できない。加えて,同性カップルは,養子の共同親権が認められない。
法務省が外国籍の同性パートナーに「配偶者等」の在留資格を与えない結果,外国籍のパートナーと日本で生活する際,短期滞在の在留資格での日本の滞在を余儀なくされる。
医療機関は,一定の家族への病状説明や治療方針決定への関与を認めているが,同性パートナーにはほとんどこれを認めていないのが実情である。
これらはほんの一例であり,同性カップルが直面する法律上・事実上の不利益は極めて広範囲に及び,同性婚の法制度を整備する必要性は極めて高いのである。
ところで,2019年5月現在,諸外国において同性婚が認められている国・地域は28か国に及び,NPO法人EMA日本によれば,登録パートナーシップを持つ国・地域を含めると世界中の約20%の国・地域で同性カップルの権利が保障されている。
また,日本においても,2015年に行われた研究者グループによる性的マイノリティについての意識に関する調査や,2017年にNHKが行った世論調査の結果は,いずれの調査においても,同性婚を認めることに肯定的な意見が50%を超えていた。
にもかかわらず,日本においては,同性婚が未だ法整備されていないことから,事実上の不利益を解消しようと,27の自治体がパートナーシップに関する要綱等を制定しているし,神奈川県においても,横須賀市や小田原市にて要綱が制定されている。
こうした各自治体の取り組みは,同性婚への社会的理解を深め,同制度成立を後押しするものとして評価されるべきである。しかし,前記2項で指摘した問題が解消されるものではないことにも留意する必要がある。
それ故,日本弁護士連合会も2019年7月18日,国に対し,同性婚の不整備は憲法違反であると指摘し,これに関連する法令の改正を速やかに行うべきであると意見を出した。
以上より,同性婚が認められないことは憲法13条及び14条に違反し,同性カップルの被る数々な不利益を解消すべきこと,同性婚を認めるのが世界の趨勢であり国内でもこれを求める声が高いことなどから,当会は,国に対し,同性婚を認める法制度を早急に整備するよう求める次第である。
以上
2019年10月17日
神奈川県弁護士会
会長 伊藤 信吾
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