2018年12月14日更新
しかし、女性であることを理由とする不利益取扱いは、憲法14条の下で公の秩序を構成する男女平等原則に反しており、私立大学も学校教育法上の教育機関として公の性質を有すること、並びに、性別を理由に医師という職業に就く道を閉ざされるという重大な不利益をもたらすことに照らせば、絶対に許されないというべきである。
この点、統計上、出産・育児等を契機として女性医師が離職する傾向が認められる。その要因として、女性医師の約7割が男性医師を配偶者としている中で、医師は他の職種に比べても長時間労働の割合が特に高く、医師としての勤務と家事・育児等の家庭内労働の両立が困難になっていること、並びに、「男は外で働き、女は家庭を守る」という性役割分担意識が社会的に強い影響力を持ち、主として女性は家事・育児等の家庭内労働を担わざるをえないとされることにより、特に女性医師にとって勤務継続と出産・育児等との両立が一層困難になっている状況がある。
しかし、男女が性別に関わりなく個人として尊重されるべきものである以上、労働効率の低下を理由として女性医師の数を減らすという方策は許されない。出産・育児等と医業の両立を困難にするような医師の長時間労働を可及的速やかに解消することが必要である。それとあわせて、男女が性別に関わりなく家事・育児等の家庭内労働を担えるように性役割分担意識を克服することも求められる。
また、面接試験において、女性受験生に対してのみ「子どもを産んだ後も医師を続けるのか」「熱を出した自分の子どものお迎えと外来の急患のどちらを優先するか」などの質問がなされたケースがあるとの報道もなされている。面接試験において、意識的又は無意識に女性受験生に不利な採点・選考がなされることを防止するためには、面接試験の評価基準を明確化したり、試験官の性別を男女同数にしたりするなどの対策が必要となる。
2018年(平成30年)12月13日
神奈川県弁護士会
会長 芳野 直子
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